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バレた!

とは言え、そう簡単に答えがわかったら苦労はしないわけで。 「椎名。今日は先に戻ってていいよ」 放課後、駅までの道のりを一緒に歩いている時に告げられた言葉に、俺は思わず足を止めた。 「えっ?」 「ちょっと野暮用があってさ……。日付が変わる前には戻って来るから」 露木君は隣を歩きながら、もう一度申し訳なさそうに口を開く。 「そっか、ふーん……。でもまぁ、露木君にだって用事くらいあるだろうし。別にわざわざ報告しなくたって良かったのに」 「ちゃんと言っておかないと、椎名が寂しがると思って」 「は? んなわけないだろ。なんで俺が寂しがらなきゃいけないんだ」 露木君の言葉に思わずムッとする。俺が寂しがるなんて、露木君は一体俺をなんだと思ってるんだろう?  確かに四六時中一緒に居るのが当たり前になりつつはあるけど……。でもだからって、ずっと側に居たいとかそう言うんじゃないし。 「そう? 僕は寂しいけどな」 さらりと言われた言葉に思わず面食らう。どうしてそう言う言葉を恥ずかしげもなく言えちゃうんだろうか。 露木君って、人たらしと言うかなんというか……。 そりゃ、ちょっとは驚いたけど、寂しいという感情とは程遠い気がする。 そう言えば、昼休みに珍しく誰かとメッセージのやり取りをしていたっけ。もしかして、その相手と約束でもしてるのだろうか。 「ば、馬鹿な事言ってないで早く行きなよ!」 露木君の言葉に、思わずドギマギしてしまった。それを誤魔化すように、少し乱暴な口調で露木君を追い立てる。 だけど、それを見透かされたみたいでちょっと気まずくて、俺は思わず言い訳じみた言葉を並べ立てる。 露木君は一瞬きょとんとした表情をして、それからいつもの笑顔になった。 でも、なんだろう? その笑顔はどこか、いつもと少し違う気がしたんだ。 でも、それが何かはわからないまま。 そのまま露木君とは駅で別れて、俺は一人家路についた。 「別に、寂しくなんて、ないし……」 独り言を呟きながら見上げた空は既に茜色に染まっていて、遠くの方から蛙の合唱が聞こえてくる。 寂しい、わけじゃないんだ。ただ、最近は露木君と一緒に帰るのが当たり前になってたから、少し驚いただけ。 「はー……、帰ろ」 なんだかちょっとモヤモヤした気分を振り払うみたいに、軽く頭を振る。 「そうだ! 露木君いないんだったら、久しぶりにアレ聴けるじゃん」 露木君の事を頭から追い出そうとして、ふと思い出して手を打った。  本人が目の前に居るから何となく聞きづらくて最近はいつもスマホでばかり見ていたNaoのアーカイブ。 未だに俺がリスナーだとは言い出せていない。きっと向こうだって気付いてない筈だしこれからも言うつもりはない。 露木君とNaoは同じだけど、同じじゃない。心の中にひっそりと秘めている大切な、俺だけの推しなんだから。

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