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バレた ②

薄暗い部屋で一人、ヘッドフォンを装着しドキドキしながらNaoのアカウントへとアクセスする。 聞き慣れたBGMと共に聞こえて来る低くて甘い声。 『……まだ寝付けないのか? 仕方のない子だね。いいよ、僕が眠るまで側にいてあげる……』  優しく宥めるような声音に、ドキドキと心臓が激しく脈打ちだす。 夜眠れなくって、偶々おススメに出て来て何気なく聞き始めたNaoの声。 甘くて、切なくて、でもどこか懐かしいようなその声は、まるで俺の耳に直接囁いているかのように頭の中に沁み込んで来る。 身も心も委ねてしまいたくなるような、この声はきっと魔法だ。 『 どうしたの? 顔が真っ赤だけど、もしかして照れてる? 可愛いね。もっと、近くにおいで……。沢山僕の事感じてよ』 クリアな音質。ヘッドフォン越しの甘い声は、まるで耳元で囁かれているようで思わず目を閉じた。 ドクンドクンと鼓動が早まり、ますます顔に血が上って行くのがわかる。  どうしよう……。 いつも聞いている声なのに、何だかいつもと違うような気がする。 いつも通りの優しいNaoの声だ。俺の心を落ち着かせてくれる大好きな声。 それなのに、今日はその声に身体がゾクゾクと震える。 耳元で甘く囁かれているような錯覚を覚えて、思わずゴクリと喉が鳴った。 途端に蘇って来るあの夜の記憶……。いつもは声だけだったNaoの指先の感触。甘い痺れと、羞恥に火照り始める身体。露木君の付けるバラのコロンの香りが降り注ぐように落ちて来て、その甘さにクラリと眩暈がした。 頭の中で再生される淫らな妄想に、ギュウとヘッドフォンを強く握る。 ……って、ダメだ。これじゃ本当に俺、変態みたいじゃないか……っ。 我に返った俺は慌ててヘッドフォンを外した。

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