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バレた ⑤

「でも、ほんっと嬉しいな。椎名が僕のを見てくれてたなんて」 「だからそれは、偶々だってば」 「はいはい。そう言う事にしておいてあげる。椎名はさ、コンテンツ全部見た? それとも、さっきの睡眠導入用の耳元で囁くおやすみシリーズだけ?」 「そ、それは……」 俺は答えに困る。 見たも何も。全部、そりゃあもう隅々まで閲覧済ですとも!おやすみシリーズどころか恋人気分を味わえる、ちょっとエッチな妄想シリーズも全部みてる。 なんなら、配信されたら秒でスマホで確認して、家で見返すくらいにはガッツリハマっちゃってる。 なんて、声に出せるはずもない。 さっき聞いてたアレは、俺の特にお気に入りだった。 おやすみ、と囁かれる優しい言葉とは裏腹に、耳朶を擽る舌先の艶めかしい動き。よくコメントで『声だけで孕みそう』なんて書かれるくらい色気溢れるその声。 初めて聞いた時は、カッコいい声だなってくらいにしか思ってなかったけど、クセになりそうなくらいの包容力と甘い囁きに、気付けば俺はすっかり虜になってしまっていたきっかけになった作品。 「あ、そうだ。いい事思い付いた。今夜一緒に寝ない?」 「へ、ぇえっ!?」 「あんなの聴くよりさ、僕が直接寝かしつけてあげるよ」 露木君は、名案だろうとばかりに目を輝かせる。 「別に問題は無いだろ?」 「い、いやいやいや! あるだろ!!」 「なんで?」 「な、なんでもなにも……っ!」 慌てふためく俺に、露木君は不思議そうに首を傾げる。 本当にわかってないわけはないのに、わざとらしいその態度。 「……椎名はそんなに僕の事嫌い?」 「……っ、き、嫌いじゃない……けど……」 こういうの誘導尋問とかそう言う類じゃないだろうか? 言葉の続きを見失って、口籠る。 「けど? あぁ、大丈夫。手は出さないよ。椎名に嫌われたくないし」 「……ッ」 俺の言葉を先回りして、露木君が笑う。その笑顔に鼓動が跳ね上がった。 顔が熱い。きっとまた真っ赤になってるんだと思う。 こんな状態で一緒に寝るなんて、考えただけでドキドキする。 「それじゃあ、今夜は楽しみだね」 「俺、まだいいなんて一言も……っ」 「ダメ?」 間髪入れずに尋ねられ、捨てられた子犬のような目を向けられたらもうなにも言えなくなってしまう。 「ああもう! わかった! 一緒に寝るからそんな目で見ないでよ」 半ばヤケクソ気味にそう言うと、露木くんは嬉しそうに笑った。

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