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眠れぬ夜はキミのせい

「……えっと、露木君?」 「ん? なに? 椎名は嫌だった? 腕枕」 「いや、えっと」 促されるまま露木君の部屋のベットへと横たわり、当然のように伸ばされた長い腕に「どうぞ」と招かれ、おずおずと頭を乗せた。露木君は嬉しそうに、俺の頭が乗った方の腕を肩に回して髪を優しく梳いてくれる。 ふわりと包まれる露木君の香りにコチン、と体が硬直した。 やっぱりこんなの、眠れるわけがない。撫でられれば撫でられるほど目がらんらんと冴える。 「それにしても、嬉しいな。椎名が僕の配信見てくれてたなんて……」 「……っ」 「ねぇ、どう思った?」 露木君に耳元で甘く囁かれ、思わず肩が跳ねる。 「……っ、どう、って……」 「僕の声聞いて、何考えてたの? 教えてよ」 「そ……、それは……」 露木君の言葉に、かぁぁっと顔が赤くなる。そんな俺を、露木君は楽しそうに見つめて来る。 さっき痴態を見られたばかりだ。今更何も想像しなかったとは流石に言い訳が苦しい。 だけど、自分で言葉にするのは流石に恥ずかしいというか……。 俺が答えに窮していると、露木君がフッと笑って俺の耳を軽く食んだ。 「っ、あ」 思わず小さく声を上げると、露木君がクスリと笑ったのが聞こえた。 「でも、残念だな。どうせならちょっとエッチな妄想シリーズって言うのがあるんだけど、それ聞きながらしてくれれば良かったのに」 勿論、そう言うコンテンツがあるのは知ってる。露木君とこういう関係になってから、とてもじゃないけど聞けなくなっちゃったヤツだ。だって、推しをズリネタにするなんて、そんな……。 「っ、そ、そんなの無理に決まってるだろ!」 「どうして?」 露木さんが軽く首を傾げる。 「だって、そんなの聞いたら、俺……」 「したくなっちゃう?」 「う……っ」 ドストレートな露木君の言葉に、思わず言葉を詰まらせる。 「僕は嬉しいけどな。僕の声聞いて、一人で抜いてるとこ想像したら堪らないんだけど」 「……変態ッ」 「うん、知ってる」 露木君が笑う。その笑顔は、どこか意地悪で、だけどやっぱりちょっと嬉しそうで。 「……ッ」 露木君の指先が悪戯に耳元を擽って、ゾクリと甘い疼きが背筋を駆け上がった。

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