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眠れぬ夜はキミのせい ②

思わず顔を背けようとするけど、露木君はそれを許してくれない。露木君の手が、俺の顎を掬い上げる。 「ねぇ、椎名」 「な、なんだよ……」 「手は出さないから、キスしてもいい?」 「な……っ」 露木君の言葉に思わず目を見開く。だけど、露木君はそんな俺の反応なんてお見通しみたいで、クスリと笑って俺の返事も待たずに唇を重ねた。 「んっ、……ふ」 軽く啄ばむように何度か触れ合わせた後、露木君の舌が俺の唇を割り開く。ぬるりとした生暖かい感触に、思わず体が震えた。 「っ、は……」 「椎名、口開けて」 「ん……っ」 言われるままに口を開くと、露木君の舌が更に奥へと侵入して来た。歯列をなぞられ上顎を舐められて、ゾクゾクと甘い痺れが背筋を這い上がる。 キスは嫌いじゃない。だけど、露木君とのキスは少しドキドキし過ぎる。 「椎名、可愛いね。もっと口開けて」 甘く掠れた声が鼓膜を揺らす。蕩けるような響きに全身が熱くなる。 言われた通りに口を開くと、露木君はいい子だとばかりに俺の頭を撫でてくれた。その優しい手付きに思わず擦り寄ると、露木君の目が愛し気に細められた。 「っ、ん……ぅ」 露木君の舌が更に深くまで入り込んで来る。歯茎や頬の内側、上顎をゆっくりとなぞられ舌を絡め取られる。 「は……っ、ぁ……」 飲み込みきれない唾液が顎を伝う。その感触にすら感じてしまい、俺は小さく声を漏らした。 露木君の手が優しく俺の髪を梳く。だけど、その指先はどこか悪戯に耳や項に触れ、その度にビクビクと体が跳ねてしまう。 「露木君……ッ」 「ん?」 「っ、も、もういいだろ? 俺もう寝るからっ」 「えー、もうちょっと堪能させてよ」 こめかみまでのぼって行ったキスが、頬を通って唇へと戻って来た。 そのまま深く口付けられ、舌を絡め取られる。 「ん……っ、ふ……ぁ」 甘く蕩けるようなキスにクラクラする。息を継ぐ度に漏れる吐息が熱い。 音を立てて唾液を啜られる。生々しい水音にぞくんと怪しい震えが走った。 「っ、は……ぁ」 ようやく解放された頃には、すっかり息が上がってしまっていた。 くったりと脱力し蕩けて力が入らなくなった俺の身体を露木君が優しく抱き寄せる。 ゆっくりと宥めるみたいに背中を撫でられて、その心地良さに俺はうっとりと目を細めた。 「はー、やばい。好き」 「な……に言って……」 耳元で囁かれた言葉に、思わず顔を顰める。そんな俺に構わず、露木君はそのまま俺の耳朶を食んだ。 「あ、ッ、ちょ、露木君っ」 「好きだよ椎名。大好き」 「ん……ッ」 露木君の唇が耳に触れる度にゾクゾクとした感覚が背筋を駆け上がる。思わず漏れそうになる変な声を、唇を噛んで押し殺した。 「早く、椎名も僕を好きになってよ」 露木君が、少し寂しそうな声で呟く。その言葉に、俺は何も言えずにただ俯く事しかできなかった。

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