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通じ合う思い ③

「はぁ、駄目だ。ダサい」 「え。ださい?」 「だって、あんなのただの嫉妬じゃん。僕ってカッコ悪……」 露木君は俺を見つめたまま、大きく溜息を吐き出した。硬質な眼鏡の奥にある目がなんだか泣きそうに見えて、思わず手を伸ばして頬に触れる。すると、露木君が俺の手を掴んでそのまま自分の頬に押し付けた。 「学校では大人しくしてないと椎名に迷惑かけちゃうと思って、いろいろ我慢してるのに、ぜんぜん余裕ない……」 「露木君……」 「椎名に好きな奴が居るかもって思ったら、なんかもう、ダメだった。椎名は僕のなのにって。……ごめんね。こんな重い男、ヤだよね」 そう言って自嘲気味に笑う露木君を見ていられなくて、思わずその広い背中にそろそろと腕を伸ばして抱き着く。 「椎名?」 「嫌じゃない……」 「え? いま、なんて?」 「だから! 嫌じゃないって! 俺だって、似たようなもんだし」 そう、俺だって露木君が俺以外の誰かとした事があるかもしれないって思ったら、モヤモヤして仕方なかった。露木君、絶対モテるだろうし。俺なんかより、ずっと経験豊富なのかもしれないし。 だけど、それを嫌だって思うのは俺も同じだから。 だから……。 「ねぇ、椎名。それって――……」 露木君が何かを言いかける。だけど、その続きは自分で言いたくて、俺は露木君を見上げたまま、意を決して口を開いた。 「っ、だから、その……っ、俺も露木君が好き……なんだと思う。多分……」 歯切れの悪い俺の返事に、露木君の目が大きく見開かれる。 「え、ホントに? 僕の事好き? 両想いだと思っていいの?」 「……っ」 改めて言葉にされると、なんだか物凄く恥ずかしくなって俯いた俺の両頬を、大きな掌が包み込んだ。優しく顔を上げさせられて、露木君と視線が絡む。 あぁ、駄目だ。顔が熱い。きっと俺、今真っ赤になってるに違いない。だって、鏡なんか見なくてもわかるから……。 「えっと……。椎名、聞き間違じゃないよね? いま、すきって……」 「聞き間違いなんかじゃないよ。俺、露木君が好きだ」 正面切って言ってしまってから、物凄く照れ臭くなって顔を逸らしてしまいたい衝動に駆られるけど、露木君の指が頬を押さえていてそれも叶わない。

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