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通じ合う思い ⑤
「やっと戻って来た」
教室に戻った俺を見るなり賢人が神妙な面持ちで近付いて来た。さっきの件があるから、なんとなく顔を合わせ辛くて目を逸らしたのに、そんな事お構いなしとばかりに顔を覗き込まれる。
「な、なんだよ。どうし……」
「ごめん!」
「へっ!?」
俺が問い終わるより早く、賢人が大袈裟過ぎるくらい頭を下げた。なにがなんだかわからなくって、ポカンとする俺の目の前で、賢人がガバっと顔を上げて必死な顔で俺を見つめて来る。
「悪かった! ふざけ過ぎた! お前らが出て行ってから考えたんだけど、露木の言うとうりだと思った。だからほんと、ゴメン!」
「え……あ、いや……、いいよ。別にそんな気にしてないし……」
賢人の勢いに若干引きながらも、俺はそう返した。もしかして先に戻ってから露木君がまた何か言ったりしたのだろうか?
賢人の後ろで涼しい顔をしている露木君を見ると、そう言うわけでは無さそうだけど。
「お前、いい反応してくれるからさ、ついつい、からかいたくなるんだよ」
「それ、絶対反省して無いヤツじゃん」
ぎろりと睨むと、賢人は肩を竦めて降参ポーズをした。
「反省してるってば。今後はもうちょっと自制するって」
「ほんとか?」
「ほんとほんと。だから、この通り!」
賢人がパンッと両手を合わせて頭を下げる。そこまでする必要なんて無いのに。
俺は小さく溜息を吐いて「わかったよ」と呟いた。
「……わかった。じゃぁ、マジバのセット一つで許すよ」
別に本気で怒ってる訳じゃないし、何だかんだ言っても賢人のお陰で色々と前に進めた事も多い。
それに、悪気が無かったのもわかってる。だからこれは妥協案だ。じゃないと、ずっと賢人とギクシャクしそうだし、そんな事は望んでない。
「マジバか。じゃぁ今度な」
ホッとしたような顔をして自分の席に戻っていく賢人の背中を見送り、俺は再び自分の席についた。
ふと視線を感じて横を見れば、露木君と目が合って、思わずドキッとする。慌てて視線を逸らせば、露木君が小さく笑う声が聞こえた気がした。
それと同時にポケットの中のスマホが震えて、メッセージの着信を知らせる。
『今夜、楽しみだね』
「……ッ」
絶対楽しんでる。視界の端で肩を震わせながら笑いを堪えてる露木君の気配に、なんとも言えない気持ちになりつつ、机に顔を伏せて、俺は「ばか」とだけ返した。
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