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初めての朝は ②
「露木君、可愛いな」
こんな事言ったら、怒るかもしれない。でも、可愛い。
「へへ」
俺は緩んだ頬を両手で軽く叩いてから、モソモソと袖に腕を通す。
「あ……、いつの間に……こんなに沢山」
ふと自分の身体を見下ろせば、あちこちに鬱血した痕が散っていて、思わず顔が熱くなる。
鎖骨や胸元、果ては太腿と足の付け根の近くにも。まるで、所有の徴を刻むようにいくつも幾つも。
「露木君、こんなトコまで……。これじゃぁ体育の時着替えられないじゃん」
でもどうしよう、ちょっと嬉しいかも。
「――コレ、消えて欲しくないな」
何気なく洩れた自分の声にギョッとして、思わず口を手で塞ぐ。
い、今俺……なんつった!? 頭の中でたった今自分の口から出た言葉を反芻
して、ますます顔に血が上るのがわかった。
「……って、何考えてるんだ! 俺ってば!」
思わず一人でジタバタと暴れて、腰から来る鈍い痛みに蹲る。
「なに一人で暴れてるのさ」
その声に顔を上げれば、ミネラルウォーターを手にした露木君が呆れ顔で俺を見下ろしていた。
家でよく見る甘い雰囲気を微塵も感じさせない、学校へ行くための余所行きの露木君。
何度見ても、この露木君とさっきまで俺に抱きつき、キスを降らせながら好き好き言ってた露木君が同じだとは到底思えない。
なんだかちょっとした詐欺にあった気分だ。
「ほら、水。腰痛いんでしょ? 飲める?」
そう言って差し出されたペットボトルを「ありがとう」と受け取ると、露木君はベッドの端に腰掛けて、俺の腰を撫でてきた。
「大丈夫?」
「うん、平気。ちょっとまだ違和感あるけど、動けない程じゃないよ」
「そう、良かった」
露木君は安心したように笑ってから、自分の分のミネラルウォーターを一気に煽った。その喉仏が上下する様を見つめ、思わずゴクリと喉が鳴る。
「……椎名、そんなに見られたら飲みにくいんだけど」
露木君が苦笑しながらペットボトルに蓋をして、サイドボードの上に置く。
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