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初めての朝は ③

露木君が苦笑しながらペットボトルに蓋をして、サイドボードの上に置く。 「あ、ご、ごめん」 「別に謝る事じゃないし。なに? もしかして、またしたくなっちゃった?」 「ち、違うよ!」 慌てて否定すれば、露木君はクスクスと笑いながら俺の腰に回した腕に力を込めた。そして、そのままベッドに押し倒されて、露木君の顔がゆっくりと近づく。 「ん……っ、ちょ……、もう学校……」 「わかってる。だから、キスだけ」 そう言って、俺の唇を啄みながら何度も角度を変えてキスをする。 「ッ、シたくなったのは露木君の方じゃん」 露木君の胸を押し返しながらそう言えば、露木君は「そうだね」と言って、また俺の口を塞いだ。 少し開いた唇の隙間から舌先が入り込んで来て、柔らかく絡む。ちゅっと音をさせて、何度も触れては離れてを繰り返す。 「ん……っ」 「椎名……」 露木君はキスの合間に何度も俺の名を呼びながら、シャツの裾から手を入れて素肌を撫でてくる。 「ちょ、もうダメだって! 学校遅刻するってば」 やんわりと両手で突っ撥ね思わず大きい声を上げれば、露木君は少し残念そうに「わかったよ」と言って、大人しく手を引いた。 「たく、涼しい顔してどんだけする気だよ……」 「そりゃ、だって……。椎名と両想いになれたんだもん。ずっとこうしてたいくらい」 「……や、無理だし」 露木君の発言にギョッとして即答すれば、「勿論、わかってるよ」と苦笑する。 おかしそうにクスクスと笑って、もう一度触れるだけのキスを落とした。 「冗談だってば。仕方ないから今は我慢する」 「今はって、なんだよ」 露木君の言い草に思わずムッとして唇を尖らせれば、露木君は俺の鼻をキュッと摘まんだ。 「いひゃいっ」 そのままムニムニと弄ばれて、思わず情けない声が出る。 「はははっ、可愛い。ほら、そろそろ支度しないと本当に遅刻しちゃう。あ、椎名。ズボンの下にちゃんとパンツ履くんだよ」 「っ! 普段は履いてるっつーの!!」 耳朶まで赤くしてそう言い返しても、昨夜のことがあるから説得力の欠片もない。 露木君は「はいはい」と笑いながら俺の頭をくしゃっと撫でて、部屋から出て行った。 「もー、露木君のバカ。スケベ。変態」 俺はそう悪態を吐きつつ、クローゼットの中からパンツを探し出し、ノソノソと足を通した。

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