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初めての朝は ⑥

「え……、お前って露木君の事……好き、なのか?」 「は? なんでそうなるんだ」 賢人は目を瞬かせた後で、はぁとため息を吐く。 「だって、好きな奴は目で追うとか……」 「いや、それは恋愛的な意味じゃなくて、普通に友人としてだよ。それに、アイツじゃなくてお前の事な」 苦笑しながらコツンとおでこを小突かれて、俺は「え、俺っ!?」と思わず上擦った声がでた。 「他に誰が居んだよ。つか、今すっげぇ不安そうな顔してただろ。俺が露木の事好きかもって焦った?」 ニヤリと人の悪い笑みを浮かべて顔を覗き込まれ、俺は思わず視線を逸らした。 「べ、別にそんなんじゃ……」 「ふーん?」 賢人はニヤニヤしながら、俺の頬を指でつつく。その指から逃れようと顔を背ければ「ほんっと、わかりやすい」と、追い打ちを掛けてくる。 「本当に椎名って見てて飽きないよな。でも、いいと思うよ俺。篠田と一緒に居た時よりずっといい顔してる」 「そう?」 「絶対そうだって。俺、どうしても篠田が苦手でさ……。椎名をいいカモに使ってんの気付いてたけど、何もしてやれなかったから」 「そんな……、賢人は悪くないよ」 そう言えば、以前露木君にも同じような事を言われたような気がする。こんなにも俺を気に掛けてくれてる人が居たって事にも驚いたけど、いいカモになってた事に全然気づいてなかった当時の自分って……。 「って言うか、気を付けろよ。篠田って陰険でしつこいって有名だし。今は大人しくしてるみたいだけど、いつまた椎名にちょっかい出してくるかわかんないからな」 「え、そうなの?」 「そうだよ。アイツ、女癖悪いし、椎名が思ってるよりかなり性格も悪い。何かあったらちゃんと俺を――」 「その必要はないよ」 頭上から低い声が響いたと思ったら、突然後ろから腕を引かれて、そのままの勢いで露木君の腕の中に抱き留められる。 「わ、え……っ」 驚いて顔を上げれば、露木君は俺の肩を抱きながら賢人を睨みつけていた。その眼差しは鋭く、まるで氷のように冷たい。

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