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初めての朝は ⑦

「椎名を守るのは僕の役目だから」 「ち、ちょ……っ、露木君! 何言って」 「ハハッ、愛されてんねぇ。ラブラブじゃん?」 「……っ」 揶揄うような賢人の言葉に、かあっと頬が熱くなる。 「あ、もしかして俺邪魔? じゃあ、俺は先に行ってるな」 「え、ちょ、ちょっと!」 賢人はそう言ってさっさと走って行ってしまい、その場には俺と露木君だけが取り残された。 「……露木君?」 「……なに」 「そろそろ放してくれない?」 「……やだ」 「やだって」 まるで子供みたいに駄々をこねる露木君を宥めたいのは山々なんだけど、人が見てるかもしれないところで抱きしめられるのは流石に恥ずかしい。 「此処じゃ、目立つから……」 「…………」 なにその物凄く不満そうな顔。 「ね?」 「わかったよ」 渋々と言った様子で腕を解き、露木君は俺の手を掴んだまま実験室へと足を向ける。 「……っ、露木君?」 「なに?」 「さっきの賢人との会話聞いてたんだ。もしかしてそれで怒ってる? それとも機嫌悪い……?」 恐る恐るそう尋ねれば、露木君は数秒黙り込んでから「両方かな」と少し不貞腐れたように呟いた。 「ハハッ、大丈夫だって。賢人とはそんなんじゃないし……。俺が好きなのは露木君だけだから」 握った手に想いを込めて、ぎゅっと握り返せば露木君は瞠目して、ふいっと顔を逸らした。 露木君の首元がほんのりと色づいている。 「ふふ……可愛い」 「は? いいから、行こ」 ぶっきらぼうにそう言って歩き出す露木君だけど、手はしっかりと握られたま まだ。 それが何だか照れ臭いけど、とても嬉しい。 「うん、そうだね」 俺は緩む頬もそのままに露木君の後をついていった。

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