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露木SIDE

あぁ~。なんでこんな風になっちゃったんだろう? 静かな室内に、僕の大きなため息が響き渡る。 我ながら情けない。こんなつもりじゃなかったのに。 椎名を困らせるつもりも、無理やりコトに及ぶつもりもなかった。 本当にちょっとした悪戯心が暴走してしまったと言うか。あまりにも椎名の可愛い過ぎる反応に、つい調子に乗ってしまった自覚はある。 でもまさか、あんな風な勘違いをさせちゃうだなんて想像もしてなかった。いや、確かにちょっと意地悪な言い方したかもしれないけど、椎名の嫌がる事なんて絶対にしないし。 確かに僕は椎名を揶揄って遊ぶ事は多い。でも、それはあくまでもスキンシップの一環であって、決して馬鹿にしたりとか、そういうつもりは一切ない。むしろ、その逆だ。 僕は椎名が可愛くて仕方がない。 いつも一生懸命で、真っ直ぐで、人を疑うって事を知らない危なっかしい部分もあって。放っておけない、愛しい存在。僕を真っ直ぐに見て、嬉しそうに微笑む笑顔が好きだ。 僕のやることに一々真っ赤になって、恥じらう様も。どこか子供っぽい、無邪気な反応も。 全てが可愛くて愛しくて。僕の前だけで見せる表情や態度は、僕がそうさせているのだと思うと、堪らない高揚感に包まれる。ずっと、一緒に居たい。椎名を誰にも渡したくない。僕だけのモノにしたい。 その想いは日に日に増していくばかりで。 でも、僕は臆病だから。 この想いを伝えて拒絶されるのが怖くて、つい茶化すような言い方をしてしまったり、わざと意地悪を言ってみたり。 触れる場所全てに印を残して、椎名の全てが僕のモノだと刻みたかった。 それなのに、これじゃぁまるで僕が余裕の無いガキみたいじゃないか。 いや、みたいじゃなくてそうなんだけど……。 ベッドの上で突っ伏しながらまた大きなため息を吐いた所で、扉が静かに開く気配がした。  てっきり、今夜は自分の部屋に戻って寝るもんだと思っていたのに、なんで戻って来たんだろう? 「……」 「……」 背後でゴソゴソと音がして、フッと頭上に影が差す。一体何なんだろう? 薄目を開けてそっと確認すると、椎名が今にも泣きそうな顔をしてこちらを覗き込んでいた。

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