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露木SIDE ②
「寝ちゃった?」
「……」
何と返したらいいかわからなくて黙っている僕を見て、椎名が不安げに眉を寄せる。
あぁもう、そんな顔をさせたいわけじゃないのに。
「俺、別に嫌だったわけじゃ……。ただ、恥ずかしくて……」
「……」
「キスも気持ちよかったし……そのっ、触られるのもドキドキしておかしくなりそうで……全然、嫌じゃなか――っ」
すべてを言い終える前に、椎名の腕を引き寄せ抱き締めた。不意打ちを食らって胸の上に倒れ込んできた椎名をぎゅぅっと抱きしめる。
本当に、もう、なんて可愛い事を言うんだろう。そんなの、もう僕を煽る材料にしかならないって事わかってるんだろうか? いや、わかってないんだろうなぁ……。だって、椎名だし。
「もう、ほんと無理。椎名ってば可愛すぎ」
「――っずるい! 起きてたのか!」
抗議しようとする頬を両手で挟み髪に、こめかみに、瞼に何度もキスをする。
椎名はくすぐったいと身を捩るけど、とてもじゃないけど離してあげられそうにない。
こんな風に触れ合う度に愛しさが募る。好きになればなるほど、その想いはどんどん深さを増していって、もっともっとって更にその先を求めてしまう。
「椎名、好きだよ。大好き。本当に好きすぎておかしくなりそう」
「お、俺も……。俺も好き……だよ?」
少し不安げな表情で、でも一生懸命に愛を伝えてくれる椎名が可愛くて、愛しくて。僕はその唇をそっと塞ぐ。
「ん……」
鼻に掛かった甘い吐息を漏らしながら、僕の背中に回された腕の温もりを感じて、込み上げる幸福感に胸が熱くなる。
「ね、椎名。今夜も一緒に寝ていい? 勿論手は出さないつもりだから」
「つもりって……。なにそれ」
勿論、本気で言ってるわけじゃない。椎名もそれがわかっていて、腕の中でクスクス笑っいる。
「駄目?」
「……ううん、駄目じゃない」
そう答えながら僕にギュッと抱きついてくる椎名が可愛くて愛しくて。このままもう手放したくない、とそんな想いが込み上げてくる。
「好きだよ。愛してる」
何度も何度も愛の言葉を囁きながら、その温もりを確かに感じたくて何度もまたキスをする。そうやってじゃれ合っているうちに、部屋の中が甘い空気で満ちていった。
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