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隠し切れない気持ち
「じゃぁ、僕コンビニ行ってから行くから」
いつものように学校近くの最寄り駅で降りて、そこからは別々に登校する。
俺は別に一緒に通ったっていいと思うけど、露木君は何故かそれを拒む。
「四六時中一緒に居たら、椎名の息が詰まっちゃうだろ? それに、僕といきなり一緒に学校に行ってたら周りから変に思われちゃうよ」
と、そう言って人込みに紛れて露木君は行ってしまう。
それも多分、俺の為を思っての事だと思うけど、なんていうか俺はちょっと寂しい。
別に俺は気にしないのにな。どうせ教室では一緒になるんだし、誰も怪しまないと思うんだけど。
でも、露木君がそれを望んでいないなら、俺はそれに従うしかないわけで。
「はぁ……」
「なんだよ朝っぱらから元気ないな。ため息なんてついちゃってさ。お疲れモードか?」
昇降口の近くで後ろから声を掛けられ振り向けば、いつの間に来たのか賢人がすぐ後ろに立っていた。
「や、そう言うわけじゃないけどさ……」
「あー、あれだろ。露木と離れて寂しい~、みたいな?」
「っ」
思わず目を見開いて賢人を見れば、「当たり?」なんて悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「ははっ、なんでわかったんだ? って顔してんな。オレさぁ、時々お前らと同じ電車乗ってんの。気付かなかっただろ」
「え、そうだったんだ」
約2年間も一緒のクラスに居るのに全然気付かなかった。
「話しかけようと思うんだけど、いっつもお前の近くに露木が居るんだよな。ガード固すぎて近づけなくってさ」
ガードって。そんな事は無いと思うんだけど。
まぁ、いつも満員電車の人込みから守ってくれてるような気はしてた。
でも、近づけない程じゃ無いはずだ。
「気にし過ぎじゃ無い? 普通に話しかけてくれたら良かったのに」
俺がそう言うと、賢人は頬を掻きながら辺りをキョロキョロと見回して、まるで内緒話でもするように声を顰めた。
「いや、だってさ……お前らって付き合ってるんだろ? 邪魔しちゃ悪いと思って」
「う、ぇえっ!? な、なんで?」
まさか賢人からそんな事を聞かれるなんて思ってもみなかったから、声が思いっきり裏返る。
「ハハッ、わっかりやす。お前と露木見てたらわかるって。 露木なんて露骨に顔に出てんじゃん」
「そ、そんなにわかりやすいかな……」
露木君の態度を思い出してみると、確かに露木君からの視線はよく感じる。でも、それは俺が露木君を好きだからそう感じるだけだと思っていた。
「露木ってさぁ、一見するとクールで取っ付きにくそうなイメージあるじゃん。でも、お前と話してる時だけはなんか違うんだよな」
「違う?」
「そう。お前の前だと、なんかこう、気ぃ抜いてるって言うか、肩の力が抜けてるって言うか……。とにかく、いい顔してるよ。だからわかる」
「そう……なんだ」
俺は思わず口元が緩んでしまう。ポーカーフェイスを装ってるけど全然出来てないだなんて、そんな露木君想像もしてなかった。
「お前はお前で、わかりやすいしな」
「う……っ、マジ?」
「マジマジ。つか、アイツって手加減してくれねぇの?」
手加減? 一瞬、何を言われたのかわからなかった。でも、その意味を理解した瞬間、ぼっと顔が熱くなる。
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