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隠し切れない気持ち ④

「今日は随分機嫌がいいみたいだね。何かあった?」 その日の昼休み、いつものように一緒にお弁当を食べることになった俺達。露木君がエビフライを食べながら首を傾げ聞いてくる。 「え? 別に、何もないけど……」 俺は内心ドキリとしながら、平静を装ってそう答えた。 でも、露木君は納得いかない様子で、更に追及してくる。 「そう? なんだかいつもと感じが違う気がするんだけど」 「……っ、そ……んなことないって」 今日は朝から皆が、露木君の事を凄い、凄いって言って褒めてて、それがなんだか自分の事のように嬉しくって思わずにやけてました。なんて言えるわけがない。 「コイツは、お前がみんなに褒められてんのが嬉しいんだって」 「え?」 「ちょ……っ、賢人!」 慌てて止めに入ったけど、もう手遅れだった。露木君は一瞬きょとんとした顔をして、それから箸を置くとふいっと顔を逸らした。 「そ、そうなんだ……」 もしかして、露木君照れてる? 俯く露木君の耳が少し赤くなっている事に気が付いて、なんだかくすぐったい様な、そんな気持ちになる。 「ぶはっ、ウケる。露木って椎名の前じゃそんな顔もするんだな」 「……悪い?」 ククッと喉を鳴らしながら冷ややかな目で賢人を見る露木君だけど、その頬はまだほんのりと赤く染まっていて、俺は思わず口元が緩むのを抑えきれなかった。 「なに笑ってんの」 「あ、いや……。なんか、可愛いなって思って」 「…………」 正直な言葉を口にすれば、露木君は何か言いたげに二、三度口を開きかけたが、結局口を噤んだ。そして、小さく咳払いすると、何事もなかったかのようにまたエビフライに箸を伸ばす。 「たく、甘ったるいなぁ。二人だけの世界に入りやがって。俺、もしかしなくても邪魔か?」 「うん、邪魔」 「ちょ、ちょっ! 露木君ッ」 「何?」 思わず声を上げて突っ込んでしまった俺に、露木君が不機嫌な視線を送ってくる。 俺達が三人で弁当を食べるようになってからと言うもの、露木君と賢人はいっつもこんな調子だ。

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