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隠し切れない気持ち ⑤

賢人は全然気にしてないし、寧ろ珍しい露木君の”素”が見れるからって、面白がってるところもあるみたいだけど……。 「露木、お前案外可愛いとこあるんだな」 「煩い。僕に可愛いなんて言っていいのは椎名だけだよ」 「ブハっ、ノロケかよ」 「煩い。黙って」 さっきから散々突っ込まれて、露木君は少し不機嫌モードに入っている。賢人と一緒に居る時にしか見られない、露木君のそんな子供っぽい所も俺は好きだ。 「はいはい。弁当も食ったし、山田達に呼ばれてたの思い出したから、俺そろそろ行くわ。あんま教室でイチャ付くなよ? 一部の女子がキャァキャァ言ってうるさいから」 「だからっ、イチャつかないってば!」 「わかったから、さっさと行きなよ」 露木君からシッシッ、と追い払うように手を振られても、賢人は気にする様子もなく、ヒラヒラと手を振りながら教室を出て行った。 賢人が居なくなった途端、教室の喧騒が戻ってくる。 「全く、騒がしいったら……」 露木君はそうぼやくと、食べ終わった弁当箱の蓋を閉めて、鞄の中にしまった。 「あ、そうだ。露木君。六限目の授業自習らしいんだけどさ、勉強、教えてくれない?」 「勉強? 別に良いけど……。勉強くらい家でいくらでも教えてあげるのに」 「え。……それはそう、なんだけど……」 ええっと、と、思わずもにょもにょ口籠る。 「ダメなの?」 「う……っだって……」 家で勉強なんてしたら、エッチな雰囲気になっちゃって、結局勉強なんかしたんだかしてないんだかわからないような事になっちゃうから。なんて言えたら苦労しない。 「だって、何? ハッキリ言ってくれないと、わからないよ」 露木君は多分俺の言いたい事なんて全部お見通しなんだろうに、それでも敢えて俺に言わせたいらしい。意地悪だ。 「そのっ、……勉強どころじゃなくなっちゃう、から……」 自分で言ってて、めちゃくちゃ恥ずかしい。顔が熱い。多分今の俺は真っ赤になってるだろう。 「ふふ、そっか。じゃぁ、仕方ないね。いいよ、教えてあげる」 とびっきりの甘い顔と甘い声で囁かれて、心臓がドッと大きく跳ねる。 「あ、ありがと……」 やっぱり露木君はズルイと思う。こんなに毎日俺ばっかり露木君にドキドキしてるのって、なんだか不公平だ。 「じゃぁさ、勉強教えてあげる代わりに、僕のお願いも聞いて欲しいんだけど、いいかな?」 「うん。俺に出来る事だったら。何?」 「放課後、僕にちょっと付き合ってよ」 「え? あ、うん。いいけど……」 何をするんだろう?と少し疑問に思ったけど、特に断る理由もないので素直に頷いた。 「じゃぁ、決まり。楽しみにしとくから」 「うん?」 一体何をするんだろう?と気になった。けど、丁度そのタイミングでチャイムが鳴り響き、先生が教室に入ってきたためその疑問は直ぐに頭の中から消えていった。

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