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隠し切れない気持ち ⑥
放課後、露木君にエスコートされるがままにやって来たのは、学校から少し離れた所にあるカフェ。
数カ月前にオープンしたばかりのこの場所は、テラス席から周囲の自然が豊かで、四季折々の風景が楽しめる外豪沿いにあるスイーツ専門店で、最近よくSNSを賑わせている人気店だ。
用事に付き合って欲しいなんて言うから何処に連れていかれるのかと思ったけれど、これって所謂、放課後デートってやつなんじゃないだろうか。
「良かったね。テラス席空いてるって」
ガラス張りの店内は、平日の夕方だと言うのにもかかわらず女性客で賑わっていて、俺達が通された席は、運よくテラスの一番端っこだった。
日差しが少し強かったけれど、シックなパラソルが影を作ってくれているから、思ったほど暑さを感じない。
「椎名はなにが食べたい? 好きなの選んでいいよ」
「あ、うん。えっと……」
内心ドキドキしながら露木君が渡してくれたメニュー表を開く。
何にしようか。露木君は紅茶かコーヒーかな? SNS映えしそうな写真の数々に、思わず目移りしてしまう。
本当にどうしよう。チーズケーキやフルーツたっぷりのタルトも美味しそうだし、プリンアラモードも捨てがたい。いやでも、このベリーたっぷりのパンケーキも美味しそうだ。
あぁでも。男二人でこんな所に来て、テラスでパンケーキってどうなんだろう。
ちょっと、……いや、かなり恥ずかしいような気がする。露木君はそう言う事全然気にしなさそうだけど。
――やっぱり此処は無難にコーヒーにしておこうかな。
「椎名。何でもいいんだよ? 好きなのを頼みなよ」
「!」
ビックリしすぎて思わず手が止まる。
「せっかく来たんだし。人の目なんか気にしないで自分が食べたいのを選びなよ」
「露木君って、人の心が読めるの?」
なんでわかったんだろう? やっぱり露木君はエスパーか何かなんじゃなかろうか。
「ハハッ、まさか。椎名が顔に出やすいだけだよ」
「え、うそ。俺ってそんなにわかりやすいかな?」
「うん、かなりね。だって、目をキラキラさせながらメニューをジッと見てたかと思ったら、急に諦めたみたいに前のページに戻るんだもん。わかりやすすぎるでしょ」
「うう……っ」
なんて事だ。そこまで見られてただなんて! と言うか、露木君は俺が選んでいる間ずっと俺の事を見てたって事じゃん。……それはそれで、結構恥ずかしい。
でも、露木君はそんな俺の気持ちなんかお構いなしに、「で? 結局どれにするの」と聞いてくる。
「えっと……、じゃぁ、このパンケーキで……」
「なら、僕はこのイチゴパフェにするよ」
「へ?」
一瞬冗談かと思った。けど、露木君は涼しい顔をして近くを通りかかったウエイターさんを呼び止め、本当にパンケーキと、イチゴパフェを注文してしまう。
てっきり、コーヒー(しかもブラック)でも頼むのかと思ってたから、何というか凄く意外だった。
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