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隠し切れない気持ち ⑦
「実はさ、僕。甘い物好きなんだけど、こういうお店に一人で来るのは、ちょっと抵抗あってさ」
どこか少し恥ずかしそうに話してくれる。その表情がいつもよりも若干幼く見えて、本当に好きなんだって伝わって来る。
あぁ、だから付き合って欲しいって言ったのか。
まぁ、男同士で来るのも結構勇気がいる事だと思うけど。
周りは何処を見ても女性ばかりで、たまに男子が居たとしても相方は必ず女性だったりする。
俺達目立ってないかな? ちょっと気になるけど、露木君が他の女子と一緒に此処に来たりしたら、それはそれで嫌だから、やっぱりこれで良かったんだと思う。
「お待たせ致しました」
ウエイターさんが注文した品を持ってきてくれて、それぞれの品をテーブルに並べると、一礼して去って行く。
「わぁ……っ、美味しそう!」
思わず感嘆の溜息が漏れた。写真で見るより実物の方が断然おいしそうに見える。ふわっふわで分厚い生地の上には、たっぷりの生クリームとバニラアイスが乗っていて、その上には真っ赤なイチゴがこれでもかと言うほど乗せられている。
「っ、……やば、美味しい!」
口の中に広がる優しい甘さに思わず頬が緩んだ。
生クリームの程よい甘さとバニラの風味。上にかけた蜂蜜がまた絶品でパンケーキの風味を更に引き立ててくれる。
パンケーキだけでも十分に美味しいけど、そこにこの濃厚で甘酸っぱいイチゴが加わると、もう至福の一言に尽きる。
「ふふ、椎名ってばすっごく美味しそうに食べるよね。見てるこっちが嬉しくなるよ」
「だって、これ本当に美味しいんだ。あ、そうだ。露木君も食べなよ」
「えっ?」
切り分けたパンケーキにクリームと蜂蜜を付けて、露木君の口元へと持っていくと、露木君は一瞬驚いたように目を大きくした。
って! なに俺、ナチュラルに”あーん”なんてしてるんだよっ! おしゃれなカフェのオープンテラスで男二人がスィーツを頼んでいるだけでも目立つのに、さらに”あーん”って……。
全く違和感なく、ごく自然に振る舞ってしまった自分が恐ろしい。
でも、今更その手を引っ込めるわけにもいかず固まっていると、露木君は心底嬉しそうな甘ったるい顔で、俺の手首を掴むとそのままパンケーキを口に含んだ。
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