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隠し切れない気持ち 11

「ええっと、露木くん? この状況は一体……」 家に戻って早々、ソファに座るように促され、訳も分からないまま何故か俺は露木君の股の間に座らされてしまった。 そして、後ろから包み込むように抱きしめられ、身動きが取れずにいる。 「は、配信の手伝いの話をするんだよな?」 確かにそう言っていた筈なのに、何がどうしてこうなったのか!? 恐る恐る見上げると、露木君はにっこりと笑った。涼やかな笑顔の奥に、何だか得体のしれないものを感じる。 「んー、そうなんだけど。その前に、ちょっとだけ充電させて」 「じ、充電って……」 露木君は甘えるようにそう言って俺の首筋に顔を埋める。学校ではあんなに塩対応のクセに、家に居る時はなんでこんなに甘々なのか? 普段とのギャップに、不覚にもきゅんとしてしまう。 時々、悪戯をするように首筋を掠める唇や、吐息が擽ったくて身を捩ると、その腕は俺の身体をなぞるように動いて、気が付けば両腕に閉じ込められていた。 後ろから抱きしめる腕は逞しくて、包まれた背中から熱が伝わって来る。その熱に煽られるようにして鼓動が早くなるのが、自分でもわかった。 「椎名、いい匂いがするね。こうやってると凄く落ち着く」 「ん……っそ、そうかな?」 耳の後ろ辺りにフニフニとした柔らかな感触。息がかかってくすぐったいし、髪に触れる露木君の唇が少し冷たくて俺は全然落ち着かない。 「ざわついてた気持ちが、椎名に触れてると落ち着いて行くんだ。こうやって抱きしめたいのも、キスしたいのも椎名だけだよ」 露木君の唇が耳に触れたまま話すから、その息が耳の奥まで届いて、思わず身体が震える。 そのうちに指先を絡め取られて、露木君の指と恋人繋ぎになり、自然と手に力が入った。

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