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隠し切れない気持ち 12
「それって、もしかして……一織の事と関係あったりするのかな」
「え?」
一織の名前を出すと、露木君の動きがピタリと止まる。
「だって、露木君は一織と俺が一緒に居るのを見ただけで、なんか怒ってたし」
「別に怒ってなんかいないよ」
「でも……」
露木君は俺の肩に額を乗せて、はぁ……っと大きく溜息を吐いた。
「怒ってた訳じゃないんだ。ただ、ちょっとだけ……彼が羨ましいと思っただけで」
そう言って、一度言葉を区切ると、俺を抱く腕に力が籠る。まるで俺を腕の中に閉じ込めるように。
後ろから抱きしめられているので、露木君の表情はわからない。けど、言葉の節々に何となく寂しさのようなものを感じるのは気のせいだろうか? もしかして、本当に何か悩み事でもあるんだろうか?
「一織が羨ましいって、なんで?」
「……名前で呼んでたじゃないか……」
ん? 名前? 一織の? んー、……あぁ! なるほど、そういう事か。
どうやら露木君は、俺が一織の事を下の名前で呼んでいた事が気に入らないらしい。
「って、もしかして怒ってたんじゃなくって拗ねてただけ?」
「……っ、悪い?」
だけど、それって……。
なんか、可愛い過ぎませんかね? 時々見せてくれる露木君の意外な一面は、本当に心臓に悪い。
だって、あのNaoだよ? Naoがそんな事で拗ねてるなんて、誰が想像できる?
しかも、その相手が幼馴染の一織だなんて。そんなの最高に可愛い過ぎる。
「ふっ、くくくっ」
堪えきれずに漏れてしまった笑いに、露木君の眉がピクリと動いた。
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