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隠し切れない気持ち 13
「笑わないでもらえるかな」
「ご、ごめ……、だって、露木君が名前で呼んで欲しくて拗ねてるとか……可愛すぎて…ふふっ」
「……五月蠅いな。仕方ないだろ? 藤丸にも名前で呼ばせてるのに……。僕だって環って呼びたいし、名前で呼んで欲しいのに」
露木君は腕を解くと、俺のお腹に腕を回して背後から顔を覗き込んだ。
「ねぇ、環」
「う……っ」
耳元で甘く囁かれて思わずドキリとする。
「学校以外では、名前で呼んでよ」
首の後ろに唇が触れ、ちゅ、ちゅっとリップ音を立てながら、露木君の熱い唇が首筋から顎の方までいくつも降ってくる。
「ねぇ、環ってば」
吐息交じりの恐ろしいほどセクシーな声で名前を呼ばれて身体が震えた。その声だけで、もう俺の頭は蕩けそうになっている。
「ちなみに言うと、僕の名前は――」
「それは知ってるって!……っ、な、な……」
名前を呼ぶだけなのに、こんなにも照れくさいだなんて知らなかった。
「そんな、どもらなくても」
「う、五月蠅いなっ、ち、ちょっと待って! 心の準備が」
だって、名前って……っ! 憧れのNaoを呼び捨てにするとかハードルが高すぎるっ。
「ねぇ、こっち向いてよ」
「……っ、な、なおと」
意を決して顔を上げ、震える声で名前を呼んでみる。
蚊の鳴くような、小さな声にしかならなかったけど、それでも露木君はとびっきり蕩けるような甘い笑みを浮かべて、優しく俺を抱きしめた。
「うん、これからはそう呼んでよ」
あぁもうっ、本当にズルイ! そんな顔されたら、もう何も言えなくなってしまう。
「環……」
「ふあ……っ」
耳元で名前を呼ばれたと思ったら、耳朶にぬるりとした感触がして思わず変な声が出てしまった。
「ち、ちょぉ……っ! 配信の相談するんじゃなかったのかよ!?」
「んー、そのつもりだったんだけど、シたくなっちゃった。だめ?」
「う……っ、ん、ぁ」
耳の輪郭をゆっくりとなぞるように舌が這い、熱い唇が息を吹き込みながら尋ねて来る。
そんな事言われて、断れるわけ無いじゃないか。
「だ、だめ……じゃない」
恥かしくて、露木君の胸元に顔を埋めながら答えたら、露木君は満足そうに笑った。
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