131 / 220

真夜中の×××

夢の中で、俺はパソコンに向かっていた。リビングの椅子に座って、キーボードを打っている。 キーボードを叩いている音がやけに耳について、少しずつ意識が浮上してくる。 突然、夢はフッと終わりを告げた。もう自分はキーボードを叩いていない筈なのに、不規則なカタカタと言う音が耳について離れなかった。 重たい瞼を無理やりこじ開けると、ベッドの向こうで机に向かい、パソコンで作業をしている露木君の姿があった。 俺が眠っていたからだろうか? 電気も付けずにデスクライトだけを付けて何か作業している。 あぁ、そう言えば俺、相談に乗って欲しいって言われてたのに、あの後、疲れて眠っちゃったんだ。 そっと手を伸ばしてスマホを確認すれば、時刻は深夜二時半。 露木君はいつからああやって作業してるんだろう?  最初は、ネットでなにか見ているのかと思った。 でも、露木君のキーボードを叩く手が止まる気配はない。  配信の事で何かしているのだろうと、そう確信したのは、10分ほどそれが続いた後だ。 コーヒーでも淹れてあげようかとも思ったけど、露木君の集中力を切らすのは気が引けるし、何より……。パソコンの前に座る露木君の横顔があまりにも格好良くて見惚れてしまう。 伏せ目がちな目で、真剣な表情を浮かべてキーボードを叩く姿はとても様になっていてかっこいい。 気を失うように寝落ちしてから、2,3時間しか眠ってない。けど、その割には頭は妙に冴えている。 明日も学校があるから、そろそろもう一度寝ないといけないのに、露木君に心が掴まって目が離せない。 ずっと見ていたい。でも、もうそろそろ寝ないと明日が……。そうは思うのに、俺の視線はパソコンから露木君の方へと移って行く。 その横顔が見たくて、その目に俺を映して欲しくて。 「あ、起きた? ごめんね、もしかして、起こしちゃったかな?」 そんな俺の視線に気づいたのか、露木君がパソコンを打つ手を止めて、ベッド脇までやって来た。

ともだちにシェアしよう!