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真夜中の××× ⑥

「……わかった。詮索して悪かったよ」 俺の反応を見て思うところがあったのか、賢人がバツの悪そうな表情を浮かべて渋々矛を収めてくれた。 「たく、露木って、椎名の番犬みたいだな」 ぼそりと、呟いたつもりだろうけど、しっかり聞こえてるから! 「……そりゃ、勿論。椎名に悪い虫が付くと困るからね」 目を細めて、人の悪そうな顔を浮かべる露木君。マスクの下はきっと意地悪な顔をしているんだろうなって言うのが何となくわかった。 クラスの皆は露木君の事を何を考えてるのかわからないとか無口だとか、冷たくて近寄りがたいとか言うけど、意外と表情豊かだし、結構感情も表に出す方だと思う。 賢人に対して露木君がちょっと意地悪なのも、こうやって庇ってくれるのも、露木君の俺に対する好意が溢れてるってわかるから嫌いじゃない。 「へいへい。たく、椎名は愛されてんなぁ」 「ぅ……ッ、あ、愛って」 呆れたような、揶揄い交じりの賢人の言葉になんと言ったらいいかわからなくて、ちらりと視線を上げて露木君の顔を盗み見ると、満面の笑みを浮かべて頷いた。 「うん。僕は環の事愛してるから」 「……ッ!」 「露木、おま……っ、よくそんな恥ずかしい事言えるな。流石の俺でも引くわ」 「そう? でも、誰にでも言うわけじゃない。藤丸の事、信頼してるから言えるんだよ」 「……くっそ、なんなんだよ。それ」 賢人は、一瞬面食らった顔をして、視線を彷徨わせた後、ガシガシと頭を掻いて、ふいっとそっぽを向いてしまった。 その耳がほんのり赤く染まっているのは、きっと見間違いじゃない。 露木君って、天然の人タラシか何かだろうか。一見素っ気なく見えるのに、時々こうやってさらりととんでもない事を言う。 「なに、人の友達惑わせてるのさ」 「え? 何の話? 僕は事実を述べただけだよ?」 涼しい顔をして、しれっと言い放つ露木君はクスっと笑って耳元に顔を寄せて来た。

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