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真夜中の××× ⑦
「――ところで環。学校で随分大胆な事するね。本当はアレ、使ってみたくて堪らないんでしょ」
耳元をくすぐる吐息交じりの囁きにぞく、と腰が震える。
思わず、バッと耳を押さえて露木君の方を向くと、悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
「ち、違うから! べ、別にっ! そう言うんじゃなくて……」
でも、と呟いた先を見失ってしまう。何も言えなくなって俯いた俺の頭を、露木君の優しい手が撫でていく。
「冗談だよ。環は可愛いなぁ」
「……っ露木君って、絶対ムッツリだよね」
「そうかもね。だって、環の事に関しては、意外と貪欲だから、色んな表情の君が見たいし、快楽に溺れる姿をじっくり堪能したい」
露木君が、俺の頬に手を添えて顔を上げさせた。
「そ、そう言う事を……っ!」
露木君こそ真昼間の教室でなんて事言うんだっ! 誰かに聞かれでもしたら、と思うと気が気じゃないのに、露木君ときたら、そんな俺の反応を見て楽しんでいる。
「それにしても残念だな。早くアレを試したいのに、今日はちょっと用事があって戻るのが遅くなるんだ」
「え? そうなんだ」
露木君は定期的に用事があるらしく、週に1度は帰りが遅い日がある。何処でなにをしているのか気にはなるけど、あまり詮索するのも良くない気がして、俺はいつも聞きそびれてしまう。
「どうしてもシたかったら、一人で先に試しててもいいんだよ? あぁ、寧ろそれをコッソリ眺めるのもいいなぁ」
「んなっ!? し、しないからっ! ばっかじゃないの!? 変態かよっ!」
そんな不埒な事をするわけ無いじゃないかっ! 思わずそう返したものの、露木君ならやりかねない気がしてしまい、慌てて頭を振る。
「あはは、冗談に決まってるじゃないか」
「……露木君が言うと冗談に聞こえないんだけど!?」
「やだなぁ、本気でそんな事するわけないだろ?」
露木君がそう言ってにっこりと微笑んだ。
あぁ、でも、笑ってるけど、この人なら、俺を揶揄うためだけに本当にやりかねない気がする。
そんな事を考えてたら、帰りのホームルームを告げるチャイムが鳴り響いた。
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