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友情と疑惑 ⑨
「ねぇ、環先輩。やっぱ俺、そっち行こうか? 電話だけじゃ心配だよ。俺、先輩の顔見たい」
一織の心配そうな声が電話口から聞こえる。
「大丈夫。一織に話を聞いて貰ったら少し落ち着いたし。まだ本人に何も聞いてないうちから、不安になるの良くないよな。ごめんな、こんな変な話聞いてくれてありがとう」
「謝んないでよ。……もし、話してやっぱダメだって思ったら、直ぐに俺に言って。環先輩を苦しめるようなヤツだったら、俺が容赦しないから。ね?」
「ハハッ。頼もしいな」
「俺、マジで言ってんだよ?」
一織は、ふざけて言ったようには見えない。それだけ俺の事を心配してるんだってわかって嬉しいけど、でもやっぱり俺は、露木君の事を信じてる。信じたいと思う。
「あ、それと、今度の土曜日空いてない? 今度、父さんの会社でパーティがあるらしいんだけど、社会勉強だと思って俺も参加しろって五月蠅くてさぁ。スーツとかよくわかんないから付いて来て欲しいんだ。今日の相談料だと思って! ね?お願いっ」
一織の唐突なお願いに思わず苦笑する。そんな大事なパーティがあるなら、それこそお父さんに付き添ってもらうべきだと思うのだけど。
とは言え、弟みたいな一織に頼りにされて悪い気はしないし、今日の相談料と言われてしまえば断る理由も無い。
「スーツの見立てなんて俺出来ないけど、それでもいいなら」
「やった! 約束だよ?」
きっと電話の向こうでは屈託のない子供みたいな笑顔をしてるんだろう。
一織の笑顔を思い浮かべながら、俺も小さく笑い返した。
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