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真実は
一織との電話を終えてから、俺はまたバラの前に戻る。
あと少しで咲きそうな花びらが、少し開いて見える。
「ねぇ俺、どうしたらいいのかな」
ポツリと零れた言葉は、誰の耳に届くでもなく、ただ夜の静寂に溶けて消えた。
一織に話を聞いて貰って少し気が楽になったけど、それでもやっぱり、あの女の人の事が頭から離れない。
露木君は一体どう言うつもりなんだろう? 仮に浮気じゃなかったとして、あの人は一体誰?
モヤモヤとした重苦しい気持ちを抱えたままバラを眺めていると、玄関の方で物音が聞えて来る。
ハッとして玄関の方を見れば、丁度露木君が帰って来たところだった。
「あれ? そんな薄暗いところで何してるの?」
「あ、いや、別に」
どうしてもぎこちない態度になってしまう俺をどう思ったのか、露木君は不思議そうに首を傾げた後、ゆっくりといつものように近づいて来る。
「そう? あ、もしかして俺待ちだった? ごめん、遅くなって」
「ううん、大丈夫」
露木君の態度はいつもとなんら変わった所は無い。柔らかなその表情からは、後ろめたさとか、そう言うのは一切感じられない。
多分、昼間の事が無かったら、俺は何も疑わずにこの笑顔に騙されていただろう。
でも、今は違う。
「露木君」
「なに?」
「俺さ……、見ちゃったんだ。露木君が女の人と一緒に歩いてる所」
まだるっこしいのは嫌で、思い切って昼間見た事を露木君に打ち明けた。
まさか、そんな事を言われるなんて思ってもみなかったのだろう。心底驚いたような顔をした後、露木君は困ったよう眉を下げ、頬を掻いた。
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