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真実は ②

「……そっか。見られちゃってたんだ」 露木君が、大きく息を吐く。否定したり、隠したりしないだけマシだけど、やっぱり事実なんだと思うと、胸が締め付けられたように痛む。 「人違いなら良かったんだけど……でも、あんなに綺麗な人だったから、俺すごく驚いちゃって……」 「もしかして、僕が心変わりしたとか思ってる? だとしたら、それは大きな間違いだよ」 露木君の言葉に、思わず顔を上げる。 心変わりしたんじゃない? じゃあ、あの女の人は何だったの? 俺の言いたい事を察したのか、露木君が小さく笑った。 そして、ゆっくりと俺の前にやってくると、視線を合わせてそっと頬に手を滑らせる。 「実は、今日は母さんと会ってたんだ」 「お、母さん? え、でも……あの人どう見たって20代だったけど」 露木君のお母さんならもっと年齢が上の筈だ。だって、俺の両親は40代だし、いくら若作りしてると言ったって、20代と40代を見間違えるわけがない。でも、露木君がそんなバレバレな嘘を吐くとも思えなくて、首を傾げる。 すると、露木君が少し言いにくそうに視線を彷徨わせながら、口を開いた。 「僕の母さん、14歳で僕を産んだから、今年31歳なんだ。だからよく間違われるんだよね」 事もなげにさらっと告げられた言葉は俺の想像をはるかに超えたものだった。何と言っていいかわからずに困惑する俺に気付いたのだろう。 「証拠もちゃんとあるけど、見る?」 「や、大丈夫! 疑ってごめん!」 証拠なんて見せられたら、それこそどう反応したらいいかわからなくなる。 でも、これでようやく納得がいった。あの女性は露木君の実のお母さんで、だから年齢が近かったんだ。でも、どうして一緒に暮らしていないんだろう? 俺の家みたいに、親が再婚して子供が邪魔になった。とか? 可能性としてはあり得ない話じゃない。パッと見ただけでもわかるくらいの美人さんだったし、31歳ならまだまだ若いから、引く手あまたなんじゃないだろうか。 「誤解が解けたみたいで良かった。環に疑われるのは悲しいからね」 眉を寄せて、露木君は寂し気に微笑んだ。ずきりと胸が痛む。 「ご、ごめん! 俺、露木君を疑うような事……わっ」 言いかけた言葉は、いきなり抱き締められて言い切る事が出来なかった。 驚きすぎて反応出来ずにいると、首筋に顔を埋められてきつく抱き込まれる。 「露木君……?」 「僕こそごめん。もっと早くに説明しておけばよかった」 「そんな事ない。俺が勝手に勘違いして、それで一人で不安になっただけだから」 お互いにごめんと謝って、謝り合戦みたいになってしまう。 それが何となく可笑しくなって、額を互いにくっつけたまま、どちらかともなく笑い合った。

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