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トラブルメイカー ②
「そういや、篠田の事なんだけどさぁ。アイツ、親の金に手ぇ出して勘当寸前なんだってさ。おまけに例の彼女から「金持ってない男は要らない」とかってフラれて、今ちょっと荒れてるらしい」
そんな話を賢人が言い出したのは、昼休みいつものように3人で昼食を取っている時だった。
「へぇ」
賢人の言葉に自分でもびっくりするくらい感情の乗らない声が出た。一時期とは言え友達だった相手だ。親しい友人もいなくて新しいクラスに中々馴染めなかった俺に優しく声を掛けて来てくれたのは彼だったのに。
久々に出た彼の話題にもう少し何か感じることがあるかと思ったのに、もう何の感情も湧いてこない。
……もう、篠田との友情は過去のものになったんだと改めて思う。
「椎名気を付けろよ? お前、お人好しだから、アイツが心入れ替えたんだとか何とか言って泣いて縋って来たらホイホイ信用しそうで怖いわ」
「それは僕も同意だな。環はもうちょっと相手を疑う事を覚えた方が良いかも」
「露木君までそんな事……。流石にソレは無いよ。そもそも、俺にあんな酷い仕打ちしといて、近づいて来るわけ無いじゃん」
少なくても俺の感覚ではそうだ。露木君も、賢人も心配し過ぎじゃないだろうか。
「わからないよ? 下衆は突拍子もない事をしだすから」
本気で心配してくれているのはわかるけど、露木君って敵だとみなした相手には辛辣だ。
「でも……、もしアイツが何か仕掛けてきたらすぐに俺らに言えよ? 環に手ぇ出したら俺が一発ぶん殴ってやるからさ」
「僕も。何かあればすぐに言って。正直に言うと、椎名の視界にも入れたくないくらいなんだけど」
「露木君。賢人も……ありがと」
俺の為にそう言ってくれる二人の気持ちが、純粋に嬉しい。
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