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トラブルメイカー ③
「まぁ、杞憂で終わればそれでいいしね」
「だな。おっと、やべ……次体育じゃん。俺、行かないと!」
チラリと時計を確認し、賢人が勢いよく立ち上がる。
「そっか。藤丸って、体育委員だっけ」
「そうなんだよ。悪い! 先に行くわ!」
そんな慌しい親友の背中を見送り、二人きりになった俺達は、なんとなく顔を見合わせた。
「藤丸ってさ、もう少し落ち着いたらいい男に育つと思うんだけど」
露木君が、少し残念そうに言う。確かに、賢人は見た目は悪くないし、運動神経だっていい方だと思う。
優しいし、気も利くし、ちょっと子供っぽいけど、そこがまた憎めないって言うか。
普段落ち着き払って、クラスの皆と壁を作ってる露木君にそんな事言われてるって知ったら、賢人はきっとすごく驚くだろうな。
露木君と足して二で割ったら丁度いいんじゃないだろうか。
「露木君はもう少しはしゃいでもいいと思うけどね」
「僕はいいんだ。椎名だけが本当の僕を知っててくれたらそれで」
そう言って、俺を見た露木君の瞳が妙に熱っぽく見えて。俺は思わず言葉に詰まる。
「き、急にそう言うの……っ良くないと思うんだけどっ」
「どうして?」
「だって、恥ずかしくなる」
「照れてる環って、すごく可愛いよね」
「……っ! ……も、もうっ!」
甘ったるい声色で、そんなセリフを囁かれて、昨日散々苛められた腰がズクリと疼いた。
「お、おおおおっ、俺っ、トイレ行って来るから、先に更衣室行ってて!」
「一緒に行ってあげようか?」
露木君の指先が、俺の首筋をなぞって行く。
「っ……!ひ、一人で行けるってば!!」
これ以上からかわれたらたまらないと、俺は慌てて席を立つ。そして、逃げる様に教室を後にした。
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