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トラブルメイカー ⑥
こういう時の不安って、意外と的中するものだ。
5限目のバスケの時間、俺はある事実に愕然としていた。
最悪な事に先生が名簿順で勝手に決めたチーム分けは、何故か俺と篠田が同じチームだったのだ。
しかも、他の3人は篠田とよくつるんでる奴らばっかり。
試合開始前に、「よろしくな!」なんて耳障りのいい言葉と共に、妙に馴れ馴れしく肩を叩かれて、嫌な予感しかしない。
露木君も賢人も後半組で隅っこの方でジッと此方を見ている。……正直、露木君と一緒のチームになりたかった。
「環、大丈夫? きついなら見学にしとけばよかったのに」
「大丈夫だって」
そりゃ、見学できるんだったら見学したかった。でも、腰がダルいのでなんて、恥ずかしくて流石に先生には言い辛い。それに、この程度の事で見学なんてして、体育の成績を落とすのはもっと嫌だった。
でもやっぱり、|コイツ《篠田》と一緒のチームなんて、不安しかない。
「なに、嫌そうな顔してんだ」
試合開始直前。それぞれポジションに付くため、バラバラに散った時、いつの間にか隣に居た篠田にそう声を掛けられた。
「……別に」
「つれないなぁ。俺とお前の仲じゃん」
「どういう仲だよ。裏切った時点でお前とは友達でも何でもないよ」
「……ふぅん、あっそ」
篠田はつまらなそうにそう言って自分の持ち場へと戻っていく。
「では、試合開始するぞー!」
先生のホイッスルと共に、ボールが高く放り投げられ、試合開始。
ジャンプボールで飛んでくる球を目で追いながら、俺は思わず顔を顰める。
試合が始まって間もないのに、篠田の動きに既に違和感を感じているからだ。
ボールを取りに行ってくれる素振りも見せないし、味方のサポートもしてくれない。
かと言って、ずっと突っ立ってるわけでもなくて、やたらと動き回ってはドリブルやパスの妨害をして来る。しかも、俺の方にしか仕掛けてこない。
他のチームメイトは、何故か俺にばかりパスを出して来るし、周りは俺より10cm位背の高い奴らばかり。
パスを受けたが最後、先生には見えない角度で足を踏まれたり、腹を肘で突かれたり、散々な目に合った。
それだけならまだいい。味方のはずの奴等まで、わざと俺に対して体当たりをして来るし。
「っ、篠田……っ、お前、わざと、だろっ」
「は? 言いがかりは止めろよ。《《偶々》》手を伸ばした先にお前が居ただけだろ。俺達は真面目に試合してるんだから、な?」
「っ……く」
篠田が俺の足を踏んづける。勿論、先生からは篠田の愚行は見えない。
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