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トラブルメーカー ⑫

そんな俺達を見て、サトちゃん先生達は顔を見合わせ、小さく笑いあった。 「ま、なんにせよ。天は性格には難ありだけど、コイツの診断は適格だから、早めに病院に行って診て貰って来いよ」 「ちょっと! 何それ。一言余計なんだけど」 サトちゃん先生がもう一度露木君の頭をくしゃくしゃっと撫でながらそう言うと、琴宮先生はすかさず抗議した。でも、その表情は言葉とは裏腹に何だか嬉しそうだ。 「事実だろ?」 「その減らず口、縫い付けてやろうか?」 「おー、怖っ。じゃあ、露木の無事も確認したし、俺は戻るな。今から篠田達の件を校長と教頭に報告して、それから会議があるから。露木は学校が終わったらすぐ病院行けよ」 琴宮先生の脅しを軽くあしらいながら、サトちゃん先生は手を振って保健室を出て行ってしまう。 「……全くもう……。あの馬鹿は……」 サトちゃん先生が出て行ったドアを見つめながら、琴宮先生は呆れた様に溜息を吐く。 そして、俺と目が合うと、あからさまにムッとした表情をして視線をふいっと逸らした。 「キミ達、まだいたの。もう此処で出来る事なんて無いから教室に戻りなよ」 まるで、邪魔だからさっさと出て行けとでも言わんばかりの態度。サトちゃん先生が居なくなった途端これだ。 「椎名。行こうか」 「あぁ、うん」 露木君に促され、俺も保健室を出ようと立ち上がる。 「待って」 「えっ? な、なんですか?」 いきなり呼び止められて、体が強張る。 「キミ。今度イジメに遇ったら、やられっぱなしじゃなくて、思いっきりチンコ握りしめて潰してやるくらいの度胸で行かないとダメだよ」 一体何を言われるのかと思ったら。 綺麗な顔に全然似合わない台詞を吐いて、琴宮先生は俺の目をじっと見つめた。 「あ、はい」 「じゃあね。もう此処には来ないでよ。 あと、無茶はしないこと」 「はい。ありがとうございました」 露木君と一緒に頭を下げてお礼を言うと、琴宮先生は少しだけ微笑んでくれた。その笑顔は確かに可愛いくて、俺は思わずドキッとする。 「黙ってたら天使みたいに可愛い、か……。確かに?」 「ホントに、ね」 露木君にしか聞こえないくらいの小さな声で呟いた俺に対して、琴宮先生はにこりと笑う。 「何か言った?」 「い、いえ! 別に!」 何でもないと言って首を振ったけど、まさかの地獄耳!? 目が全然笑ってないし、その笑顔が逆に怖いっ! まさか心の中を読まれた訳じゃ無い、よね……? そんな事を考えつつ、俺達は二人で逃げるように保健室を後にした。

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