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近付かないで ④

結局、露木君の怪我は骨には異常は見つからなくて、全治一週間程度との事だった。 ただ、やはり手首の捻挫が酷くて、暫くは利き手が使えないらしい。 「まぁ、利き手じゃない方でやれば大抵の事は大丈夫だよ」 なんて本人は軽く言っていたけど、そんな訳にもいかないし、俺が露木君の身の回りの世話をする事にした。 「薬飲む前に何かお腹に入れておいた方がいいよね!」 普段、露木君に料理は任せっきりになっちゃってるから、此処は俺が一肌脱がないと! 一人で住んでいた時は、作るのが面倒でついつい、コンビニに頼りがちになっちゃってたから、料理のスキルは正直そんなに高くない。 でも、俺だって全く出来ない訳じゃない。 気合を入れるために黒いエプロンを付けて、キッチンに立つ。 冷蔵庫の中身を確認し、じゃがいもや人参、玉ねぎを切って鍋に入れ、牛肉と一緒に煮込んでいると不意に後ろから腕が伸びて来て、俺の腰にするりと絡み付いた。 甘えるように、露木君の額がトン、と俺の肩に乗せらる。 「くすぐったいよ。なに?」 「んー、充電中」 「なんだそれ」 クスクスと笑って、顔を上げると露木君と目が合って、自然とお互いに笑みが零れた。 引き合うみたいに唇を寄せ合い、軽く触れるだけのキスをする。 「露木君、手、大丈夫?」 「うん。まだちょっと痛むけど、痛み止めが効いてるから今は平気」 「そっか」 俺は手を休めて、露木君の髪を優しく撫でた。何となく、そうする事が自然だと思えたから。

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