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食べ終わったその後は ②
レストランで出てくるみたいな、スパイシーで味に深いコクがあるわけでもないし、じゃがいもや人参は不格好でゴロゴロしていて、正直見た目はあんまり良くない。
ただ煮込んでルーを入れただけのカレーを、露木君は美味しそうに食べてくれた。
小学生でも出来るレベルの料理をあまりにも美味しい、美味しいと言って食べるから、何だか気恥ずかしくなってくる。
「ねぇ、環。一つお願いがあるんだけど」
「ん? なに?」
食べ終わった食器をシンクに持って行こうと立ち上がったタイミングで声を掛けられ、俺は露木君を振り返る。
「お風呂の手伝い、してくれないかな?」
「は!? て、手伝うって……」
「やー、利き手が使えないと髪も体洗えないからさー。さすがに一人じゃ難しいんだよね」
眉を下げ、困ったように笑う露木君の顔を見て、俺は思わず言葉に詰まる。
た、たしかに。利き手を怪我してるから、髪を洗うのも体を洗うのも一人では難しい。
で、でも……っお風呂って……っ、そ、それは……。
「い、一緒に入るのは……っ」
「え? なんで?」
「な、なんでって……」
いやだって! お風呂だよ!? 裸になるんだよ!? そんな所で二人っきりとか……っ!! 想像しただけでもう無理なんだけど! 絶対変な気を起こす自信があるしっ!
いや、起こしちゃダメだろっ!! なに考えてんだよ俺っ
ぐるぐると不埒な妄想が頭を擡げ、慌ててぶんぶんと頭を振る。
「髪を洗って欲しかっただけなんだけど、何を想像したのかな?」
露木君はそんな俺の様子を楽しそうに見つめて、意地の悪い笑みを浮かべた。
あ、なんだ、髪だけか。
別に期待してたわけじゃないけど、盛大な勘違いにじわじわと首から熱くなっていくのがわかる。
「べ、べつに……っ! 何も想像なんかしてないしっ!」
「ふぅん。僕は、環が一緒に入ってくれるって言うなら大歓迎なんだけどな。それに、怪我した時くらい頼っていいって言ってたの誰だっけ?」
「うっ、そ、それは……っ」
「片手でお風呂入る自信ないんだけどなぁ。困ったなぁ。サポーターが取れるまで安静にって言われたんだけど」
「……っ」
ニッコリ笑ってるけど、あ、圧が凄い。
俺が口で露木君に勝てた事なんて殆どないけど、此処まで言われちゃうとさすがに白旗を揚げるしかない。
「わ、わかったよ……っ。髪だけ、なら……っ」
俺は大きく息を吐き出すと、諦めの境地に達した気持ちでそう答えた。
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