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お風呂の中で

ちゃぽんと湯が跳ねて、露木君の長い足が俺の足に触れる。その触れた足にドキッとして思わず身を硬くすると、俺の背後で露木君が小さく笑う気配がした。 「っ」 「そんなに緊張しないでよ」 耳元に腰にくる重低音が響き、露木君の熱い吐息が耳朶を掠める。右の腕を濡れないように浴槽の外に出した状態で、露木君は俺の体を後ろから抱き締めるような形で浴槽に収まっている。 「緊張なんか……っ」 してない、とはさすがに言えないけど。でも、露木君だって同じ男なんだからわかるだろ? この状況で緊張しない方がおかしいって。 約束どうり手は出してこないけど、この密着度はどうなんだろう? 「そ、そんな事より、腕怠くない? 俺、やっぱ」 「だぁめ。僕がしたくてこうしてるんだから。それに、この怪我が治ったらこんなチャンスもうないかもしれない」 「え?」 「環が僕の為に色々してくれるなんて、この先もうないだろうから。だから、環の優しさに付け込んでるんだよ」 露木君はそう言って俺の肩に顎を乗せると耳元でクスクスと笑った。 「っ、じ、自分で言うなし」 露木君の吐息が耳にかかって、思わず肩が跳ねる。その反応に気をよくしたのか、露木君はそのまま俺の耳朶を甘噛みした。そして、耳の中に舌を差し入れてわざと水音を立てる。 「っあ……んんっ」 くちゅりと濡れた音が直接頭の中に響いて、背筋がぞくぞくと粟立つ。俺は慌てて唇を噛んで漏れそうになる声を必死に堪えた。 「ち、ちょっ、手は出さないって、約束……っ」 「《《手》》は出してないだろ?」 「っ、屁理屈!」 「こんな状況で生殺しみたいな提案する環が悪い」 露木君はそう言って俺の首筋にキスをする。その唇がゆっくりと首筋を辿り、項に辿り着くと強く吸い付かれた。

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