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おふろの中で ②
「っ、ふ、ぁ……っ」
ぞくっと甘い痺れが腰から背中を走り、思わず声が零れる。慌てて唇を噤んだけど、既に手遅れだ。
露木君は俺の項にキスマークを付けると、満足気な顔をする。
「可愛い声」
「っ、もー、だから……っ!」
「はいはい。もう言わない 」
そう言って露木君は俺の頭を撫でる。
「環、髪洗ってくれてありがと。凄く気持ち良かった」
「え? あ、う、うん……っ」
思いがけず素直にお礼を言われて間の抜けた返事しか出来なかった。こんな風にストレートに褒められると、少しくすぐったい気持ちになる。
そんな俺の動揺を予想していたのだろう、首筋から肩口に降りて来た唇が、俺の首筋を優しく吸い上げる。そして、露木君の熱い舌がねっとりと首筋を這い、そのまま耳元へと移動する。
「んっ……っ」
濡れた舌が耳朶を舐め上げ、悪戯に甘噛みされる。その刺激がもどかしくて思わず身を捩ると、露木君はクスリと笑った。
「環、声我慢しないで?」
「っ、で、でも……っこえ、響いて……」
「だからいいんじゃないか。えっちな環の声、凄く興奮する」
「っ、ばか……っ!」
露木君は濡れた声で低く囁くと、舌を耳の中に差し込んで来た。ちゅく、ちゅくと濡れた音が浴室に響く。そのじれったいような甘い刺激に腰が砕けそうになって、堪らず浴槽の縁にしがみ付いた。
「っ、は……ぁっ、んっ、んん……」
「環、腰動いてる。気持ちいい?」
こうなった時の露木君は意地悪だ。俺が露木君の囁き声に弱い事なんてわかってるはずなのに、低く甘い声が鼓膜を震わせ、どうしようもなく感じてる俺を言葉でも攻めて来る。
でも、もっと最悪なのは、触って欲しくて堪らないのに、俺の身体には全く触れようとしてくれない。
「つ、露木く……っ」
縋るような気持ちで名前を呼べば、何かあったのか? とでも言わんばかりの涼しげな顔で見て来るから思わず舌打ちしたくなった。
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