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協力するよ ②
静かな空間に、包帯を巻く音だけが響く。その音を聞きながら、俺はさっき見てしまった紙切れのことを思い出していた。
起訴状なんて、ドラマや漫画でしか見た事がない。露木君は誰かに訴えられるような人間じゃないと思いたい。あぁ、でも今はネットでの誹謗中傷とかで個人特定して訴えるようなケースもあるって聞くし、もしかしたらそれ?
色々な疑問が浮かび上がっては消えて行く。
「何処から話そうかな……。起訴状に書かれてた名前、見た?」
問われて静かに首を横に振る。あの時は一瞬だったし、びっくりしすぎてそんな余裕は全くなかった。
聞いてもいいのだろうか? でも、なんて聞けばいい?
ぐるぐると巡る思考回路に答えが出せず黙り込んでいると、露木君は言いにくそうに口を開いた。
「……あれはさ、実を言うと僕の母さんに届いたものなんだ」
「え? ん? お、かあ……さん?」
予想していなかった露木君の言葉に驚いて、思わず顔を上げる。すると露木君は少し困ったように眉を下げて小さく笑った。
きっと、あまりいい話ではないのだろう。俺は膝の上でぎゅっと拳を握り締めた。
「あの人ってさ、恋多き女って言うのかな。誰かに寄生して依存してなきゃ生きていけない人なんだよ」
「……」
「小さい頃からあんな感じで、恋人と上手くいってる時は音沙汰ないんだけど、別れたり、困った事がある時にだけ連絡が来るんだ。今回はどうやら既婚者に手を出しちゃったみたいでさ、その奥さんから訴えられたんだって。ほんっと、馬鹿だよねぇ」
何処か他人事のように、呆れたような声で露木君は言う。
でも、その紙を露木君が持ってるのはなんでだろう?
「まさかとは思うけど……。露木君にそれを払えとかって言ってるって事?」
「……。まぁ、そいう事になるかな」
信じられない。自分の息子に頼るとか。しかも露木君は俺と同じまだ高校生だ。
いくら配信者として稼いでるからってそんな……。
「って! 露木君が配信やってるのって、お母さんの尻ぬぐいする為じゃないよね?」
出来れば違っていて欲しい。でも、ずっと気になってた。配信である程度稼げてるはずなのに、なんであんなボロアパートに住んでたんだろう、とか、なんでお母さんが居るのに一緒に住んでないんだろう、とか。
露木君は答えなかった。でも、その沈黙は俺の勘が当たっている事を物語っていた。
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