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協力するよ ④
「優しいね。環は」
違う。俺は優しくなんて無い。
優しいのは露木君の方だ。俺なんて、いつも甘やかされて、守られてばかりで。露木君が困ってる時に何もしてやれてない。
「俺、露木君に貰ってばかりだ……っ」
「環はそれでいいんだよ。僕がそうしたいんだから」
露木君の声はどこまでも優しくて、どこまでも俺を甘やかす。その言葉に俺は小さく首を振った。だって、それじゃダメなんだ。俺だって露木君を守りたいし、頼って欲しい。
「俺だって露木君の為に何かしたい。俺ばっかり貰って、甘やかされて……それじゃ嫌だ」
「環……」
「俺は、露木君が大好きだよ! だから、だから偶には俺を頼ってよ。そりゃ、俺に何が出来るかなんてわかんないけど……、でも、露木君が一人で苦しんでるのなんて見たくない。俺は、露木君の助けになりたいんだ……っ」
俺だって男だ。好きな相手には頼られたいし、支えたいって思うのは当然で。露木君を守れるくらい強くなりたい。いつも与えられてばっかりじゃ嫌だ。でも、どうやったら露木君を支えてやれるかなんて俺にはわからない。
せめて少しでも頼ってもらえる存在になりたい。それで、どんな些細な事でもいいから力になりたかった。
思い付くままに一気にまくし立てると、露木君は驚いたように目を見開いていた。
「……っ、君は、本当にいつも僕が欲しい言葉をくれるんだね」
「え……? あ、わっ!」
今にも泣きだしそうな露木君の声。そして、そのまま強く抱き竦められて、思わず変な声が出た。
「キミは気付いてないかもしれないけど、僕はキミから色んなものを貰ってるよ。キミが側に居てくれるだけで、僕は幸せな気持ちになれるんだ」
俺の髪にゆっくりと唇が触れる。そして露木君は俺の身体を少しだけ離すと、至近距離で俺の顔を見つめて来た。
「僕は今までずっと一人ぼっちだった。母親は滅多に帰って来ないし、父親は知らない。じいちゃんが生きてた時には色々と身の回りの世話をしてくれていたけど、僕が中学に上がる頃に死んじゃって。一人には慣れてたし、寂しいなんて思った事は無かったけど……。でも、環と出逢って、一緒に過ごしていくうちに、誰かを想ったり美味しい物を分かち合ったり、何気ない時間を一緒に過ごす。そんな些細な事が凄く幸せなんだって初めて知ったんだ。無駄だと思ってたその一つひとつが心地よくて、楽しくて……。かけがえのない物だって教えてくれたのはキミなんだよ」
露木君はそう言って、俺の額にコツンと自分の額をくっつける。
そこまで言って貰えるほど、俺は大した人間なんかじゃない。でも、そうまで思ってくれる気持ちが嬉しくて、じんわりと目頭が熱くなった。
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