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露木君と一織 ④
「露木君って、時々すっごい恥ずかしい事を平気でするよね」
「そうかな?」
絶対、そうだと思う。無自覚でやってるんなら余計に質が悪い。でも、露木君は俺の気も知らずに、ニコニコしながらまたケーキを差し出してくる。
「環、ほら、あーん」
「……あーん。……美味しいけど、やっぱり恥ずかしいよ」
「そう? 僕は全然平気だけど?」
いや、絶対嘘だ。オープンカフェの一角で男同士であーん、て。目立たないはずが無いし、寧ろ少しは気にして欲しい。それになんかちょっと意地悪な顔してる!
でも、そんな表情すら格好良いとか思っちゃうから俺も大概だ。
「……ところで、さ……。さっきのスーツの件って、なに?」
ニコッと笑いながら、でも、声はちょっと低くして露木君が言う。
「あぁ、今度一織のお父さんの会社でパーティがあるんだって。それで、スーツを選んで欲しいって言われてさ」
「ふぅん」
あれ? 今度は露木君の雲行きが怪しくなってる? 急に、露木君の纏っている空気がピリッとしたような気がした。
「……アイツ。いつの間に……」
「……露木、君?」
優雅な仕草でカフェラテを飲む露木君。その笑顔は一見穏やかだけど、いつも俺に向けて来る、見てるこっちが照れてしまうような甘い笑顔じゃない。
「そろそろ、僕らも戻ろうか」
「え? あ、うん……」
ケーキを完食した頃を見計らって、露木君が席を立つ。そして俺の手を取るとそのまま歩き出した。
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