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露木君と一織 ⑥
「はぁ」
毎週水曜日はNaoの配信日。露木君とこういう関係になってからも毎週、リスナーとしてリアルタイム視聴は欠かしたことない。
でも、今日は何となく観るのを躊躇って、俺はベッドに突っ伏していた。
あの日以降、何故か露木君は俺を避けているみたいで、あまり話も出来ていない。
「嫌われちゃったのかなぁ」
一体なにを怒っているのだろう? 様子がおかしくなったのは一織のスーツを選びに行くと言う話を出してから。
一織と俺が仲良くするのはそんなにいけない事なんだろうか?
アイツはただの幼馴染で、弟みたいな存在で……。ただ、それだけなのに。
「寂しいな……」
溜息と共に零れた言葉に、自分で驚く。すぐ近くに居るのに、今はこんなに遠い。
仲直りってどうやってやるんだっけ? いや、その前に喧嘩したわけじゃないし。
でも、仲直りしたい。前みたいに笑いかけて欲しいし、もっと露木君といろんな話をしたい。それに何より、今はあの温もりが恋しくて仕方がない。
「……露木君」
名前を呼んでも返事は無い。当たり前だ。彼は今、配信中なんだから。
やっぱり、配信聴こうかな。
露木君の――Naoの声が聴きたい。
『――ごめん、みっともなく嫉妬してた』
「!?」
耳に良く馴染んだ低めの心地良い声がスマホのスピーカーから響く。
『僕は、キミが思ってるよりずっと余裕が無いんだ。だから、あんまり他の男に近づかないで』
「っ」
それは、まるで俺に言ってるみたいな台詞で……。でも、今は配信中だし、コレはただのシチュエーションボイスで、俺に向けた言葉じゃない。わかってるのに心臓がドキドキと煩いくらいに高鳴っている。
『キミが他の男に興味が無いのはわかってるけど、それでも不安になるんだ。キミは、僕のモノなのに』
「~~~っ!」
息をするのも忘れて、俺はその言葉に耳を傾ける。ああもう! こんなの、ズルい。
『だからお願い。僕だけを見て。よそ見しないで、僕だけを、見て』
「……俺だって」
俺だって、よそ見なんてしてないよ。俺はいつだって、ずっと露木君だけを見てるのに。
『好きだよ。何百回言ったって足りないくらい、キミが大好き』
甘さの滴る声が耳の奥で木霊する。ドキドキと煩い鼓動が止まらない。
『僕の事を好きって言って? その声で、聞かせて』
「……」
チラリと時計に目をやる。まだ配信は続いているけど、もうそろそろ終わりの時間だ。目まぐるしく流れるコメント欄は、Naoの告白に沸き立っていた。
「…直接言ってよ。ばか」
枕に顔を埋めたまま小さく呟いてみたそれは、自分の声じゃないみたいに聞こえた。
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