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露木君と一織 ⑦

配信が終わってしばらく経ってからも、露木君の声が耳について離れず、俺は枕に顔を埋めて足をバタバタさせる。 だって、あんなの反則だ。あんな風に言われたら、誰だってドキドキするに決 まってる。 「はぁ……。もう、どうしよう」 枕に顔を埋めたまま、大きく溜息をつくとそのままゴロンと仰向けに寝転がった。 「どうしようって、何が?」 「そりゃ……え!?」 唐突に聞こえた声に慌てて身体を起こすと、そこには俺を悩ませる張本人が佇んでいた。 たった今さっき、画面越しに見ていた相手が、俺の前にいる。 ここ数日、俺の部屋に入って来たことなんて一度もなかったのに。 「な、なんで此処に!?」 「ん? いや……えっとさ……配信、聞いてくれた?」 頬をかきながら躊躇いがちに露木君が聞いてくる。 「うん。聞いたよ。その……ごめん、俺……」 「謝らないで。僕が勝手に嫉妬して拗ねてただけだから」 露木君はそう言って困ったように眉を下げて笑う。配信で見せていた顔とは全然違う、俺のよく知る露木君の表情。 その表情を見ていると、胸の奥がぎゅっと苦しくなった。 「俺、別に一織とは何もないよ?」 「……うん、わかってる」 言いながら露木君はベッドの端に座ると俺を引き寄せて抱き締める。突然の事に一瞬身を固くしたけど、久方ぶりの温もりに抗えず俺も彼の胸に身を委ねた。 「環にとっては特別な感情なんて無いけど、向こうはそうじゃないんじゃないかな」 「へっ? 一織が? まっさかぁ。ナイナイ」 「……はぁ。ほんっと今この瞬間だけは、彼に激しく同情するよ」 溜息と共に吐き出された言葉に俺は首を傾げる。 でも、一織が俺に対してそんな気持ちを抱くなんて、やっぱりありえないと思う。 だって、アイツは弟みたいなもんだし。それに何より……。

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