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一織と露木君 ⑧
「例え、一織が俺に好意を持ってたとしてもさ、俺が好きなのはやっぱり露木君しか考えられないし……他の誰か、なんて、想像できないよ」
そう。俺はもう、露木君じゃなきゃダメなんだ。
だから……と、そこまで考えてハッと我に返り、慌てて身体を離そうとするが時すでに遅し。俺の言葉を聞いた露木君が満面の笑みを浮かべているのを目にして、しまったと思った時にはもう手遅れで。
「あっ、わ……っ、ちょ、露木く……っ」
荒々しい口付けが降って来て、そのままベッドに押し倒される。
「 ちょ……っ、まだ手が治ってないだろ? だから、こう言う事は……」
そっと胸を押し返しながら言うと、露木君は少しムッとした表情を浮かべた後、俺の首筋に顔を埋めてそこに吸い付いた。
そして名残惜しそうに身体を離すと、俺の手を取ってその指先に唇を落とした。
「……わかったよ。今は我慢する」
物凄く、不満そうな声と不貞腐れたようなその表情。普段の彼らしからぬそれに、俺は思わず吹き出してしまった。
「ふっ……あははっ」
「ちょ、なんで笑うのさ」
今度は拗ねるように唇を尖らせる露木君。でも、それすらなんだか可愛くて俺はまた笑った。
「だってなんか、子供みたいなんだもん」
「……」
不満げな表情のまま俺の胸に顔を埋めると、ぐりぐりとその頭を左右に振った。まるで大きな犬がじゃれついてくるような仕草に、愛おしさが募る。
「そんなに拗ねないでよ。ね、露木君」
「嫌だ。環が僕の機嫌を直してくれるまではこうしてる」
「なんだよ、それ。たく、仕方ないなぁ」
俺は苦笑を浮かべながら彼の頭をそっと撫でる。
サラサラとした指通りの良い髪は触り心地が良くて癖になりそうだった。
俺だけが知ってる、本当の彼の姿。
カッコいい所も、そうじゃ無い所も、全部が愛しくて、それを見られるのが自分だけだと言う優越感に浸りながら、彼の気が済むまで頭を撫で続けた。
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