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一織の独白

薄暗い部屋の中、鳴らないスマホの通知画面とにらめっこしながら俺は何度目かになる溜息を吐いた。 今日もあの男と一緒に居るのだろうか? 環は一体、何を考えてるのか。借金を抱えて訴えられているような男の何がいいんだ。 「あんな奴の何処がいいわけ? 環もどうかしてるよ」 一人呟いてみるが、当たり前だがそれに答える声はない。代わりに聞こえてくるのは俺自身の溜息の音だけだ。 「……はぁ」 環と俺は生まれた時からの付き合いで、ずっと一緒に育ってきた。親同士の仲が凄くよくて、どっちかが女の子だったら許嫁になれたのに、なんて未だに言われる程だ。 環は昔から小さくって可愛くて、年上のクセに俺の事が大好きだと言ってくれて、いつもニコニコしながら僕の後ろをついてきていたっけな。僕もそんな環が大好きだったけど……。 中学に入った途端に先輩風吹かせ始めて、いきなり『学校では先輩って呼んで』とか、『自分とばっかり遊んでないで他に友達作れ』とかって言い出して。 俺は環に嫌われたくなくて、仕方なく呼び方も言われたとうりに「環先輩」呼びに変えて、他の奴とも遊ぶようになった。けど、他の奴らといたって全然楽しくない。 学校の奴らはみんな、二言目には「一織のパパって、あの中西グループの社長なんでしょ?」 とか、「お前の家金持ちなんだろ? 一回でいいからその別荘とやらに連れてってよ」だとか、親目当てに近寄ってくる奴らばっかり。 中学あがって直ぐに出来た彼女も結局は親の金とコネ目当てだったし。 元々外面だけは良かったから、彼女が途切れることは無いし、女友達は勝手に増えるけど、誰も俺の中身を見ようとはしない。 そんな俺の事わかってくれるのは環だけ。同じ境遇にいる環なら、俺のことちゃんとわかってくれると思ったのに。 いつからだっけ……? 俺の好きと、環の好きが違うって気付いたのは。もう、思い出せないけど、男同士だし環もきっとノーマルだから、この思いに気付かれたら俺から離れてしまうだろうって……そう思ったら急に怖くなって、諦めようとしてたのに。

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