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一織の独白 ③

結局、連絡が来たのは金曜日の夜遅くになってからだった。 元々、マメに連絡をくれるようなタイプじゃないけど、ここまで連絡が無いと流石に不安も募る。 でも結局、そんな事より環に会えるという喜びの方が大きくて。俺はすぐに了解の返事を出した。 『明日、楽しみにしてる』なんて、可愛いスタンプ付きで送ってくるから、ついニヤけてしまう。 自分はそんな単純な人間じゃない。そう思ってたのに……。 たった一行の短い文だけでも、環から連絡が来たってだけでこんなに嬉しい。 「やば……っ!!」 俺はスマホを握り締めたままベッドに突っ伏して思わず足をバタつかせた。 「一織? なに暴れてるのー?」 なんて、階下から母さんの声が聞こえて来るけど、今はそれどころじゃない。 だって、明日、会える。やっと、声が聞けるんだ。そう思うと自然と顔がニヤけてくる。 それだけでこんなにも浮かれているなんて、まるで遠足前の子供みたいだ。 仕舞にはスマホで明日の天気なんか検索しちゃって、そんな自分に驚きを隠せない。 彼とのデートの時でさえこんな浮かれた事は無かったのに。 「……楽しみだな」 早く会いたい。会って、話がしたい! そんな思いばかりが募る。でも……。 本当に来てくれるのか? あの男は来ないの? もし、この間みたいにアイツも一緒だったら俺はどんな顔をして会えばいい? 平常心で居れるだろうか?  こんなんじゃダメだとわかっているのに、嬉しい気持ちと不安な気持ちが入り乱れて思考が纏まらない。 いっそ、明日は自分と環しかいない世界になればいいのに……。 そうしたら、何も心配することなんて無いのに。 「なんて、馬鹿な事考えるなよ一織」 俺は自分の考えを振り払うように頭を左右に振った後、大きく深呼吸をして気持ちを整えた。 明日になればわかることだと自分に言い聞かせて目を閉じる。でも結局、その夜は殆ど眠れなかった。

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