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環と一織 ②
その様子に、一織も露木君の事が苦手なんだなと改めて思った。
露木君と一緒に来なくて正解だったかもしれない。
お互い嫌がってるのに一緒に過ごさせるのは流石に気が引ける。
それにしても……。一織のヤツ。この前も思ったけど少し離れている間に随分とイケメンに成長したな。
背なんていつの間にか俺よりうんと高くなってるし、細身だけど程よく筋肉がついてて……。
何処かのテレビにでも出てそうな整った綺麗な顔してるし、露木君が硬質の美形なら、一織は爽やか系って感じ。
足なんて、一体何処から生えてるんだよってツッコミを入れたくなるくらい長いし。
でも……。
一織の笑顔は、昔からちっとも変わらない。
俺を見つけるなり駆け寄ってきて、嬉しそうに笑う顔とか。コロコロ変わる表情とか。そのどれもが昔のままで、なんだか安心する。
一織はずっと変わらないで居て欲しいというのは俺の我儘だろうか。
「土曜なのに、よかったのか? 彼女とか、デートの約束あったんじゃ」
「何言ってんだよ。先に誘ったの俺だよ? それに、例えデートの約束してたって、先輩を優先するに決まってるじゃん」
「そ、それはどうかと思うけど……」
と言うか、やっぱ彼女いるんじゃないか。でもまぁ、そうだよな。これだけイケメンなら彼女だっているよな。
「いいんだよ。元々そんな好きで付き合ってる訳じゃないし」
スッとほんの一瞬だけ冷たい表情をしたような気がしたけど、それは本当に一瞬で。すぐにまた笑顔に戻った。
その笑顔が何処か寂しそうで、俺は何も言えず口を噤んだまま彼の後に続く。
いつの間にか自分より大きくなってしまった広い背中は、俺の知らない一織の一面を垣間見たようで、なんだか、少し遠くに行ってしまったように感じて少しだけ胸が苦しくなった。
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