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環と一織 ⑦

「はーぁ。たく、嫌になるよ。ほんっと」 一織がわざとらしく大きな溜め息を吐きながら、露木君を見た。睨み付けたと言った方がいいかもしれない。 「どうせ俺は環から幼馴染としか思ってもらえないし……。そんなの、嫌って言うほど自分でわかってるよ」 絞り出すような、低い声。眉間の皺が更に深くなって、一織が今にも泣き出してしまいそうに見えた。 「い、一お――」 「環さぁ。ほんと鈍すぎ。ぜんっぜん俺の気持ちに気付いてくれないんだもん」 俺の言葉を遮って、一織がわざとらしい明るい口調で言う。でも、泣き笑いみたいなその表情が彼の複雑な心情を表しているようで、俺は思わず顔を顰めた。 「え、待って。気持ち、って……え?」 「……ほらね。今この瞬間でさえ、俺がどんな気持ちでいるのか、全くわかってない」 「え……あ……」 俺は言葉を詰まらせた。だって、こんな事言われたって正直困るだけだし……。確かに子供の頃から一織が俺に懐いてくれてるのは感じてたけど……まさかそれがそう言う意味だったなんて考えてもみなかった。 一体、いつから? と言うか、露木君は気付いてたのか? 「ほんっと、最悪。でもさ、環のそういう鈍感すぎるところが好きだし、可愛いって思うんだから、俺も相当だよ」 一織は自嘲気味に笑うと、小さく息を吐いた。

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