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欲求不満
あの日から何故か、露木君は俺に指一本触れて来なくなった。別に、今までだって毎日シてたわけじゃないし、そういう日もある。でも、そう言う雰囲気になりそうな気配を感じると、さらりと躱して何処かへ行ってしまう。
完全に避けられているわけじゃないし、露木君はいつも通りだ。 ただ、身体の関係だけがパタリと途絶えてしまった。
あれから二週間くらい経ったけど、キスすらしてない。
どうしてなのか理由がさっぱりわからなくて、俺は一人で悶々とする日々が続いていた。
俺だって健全な男子だし、そう言うことへの興味も性欲も普通にある。でも、露木君に触れられないのがこんなに辛いなんて思わなかった。
もう二週間もシテない。もちろん、一人でシテないわけじゃないけど、前みたいに気持ち良くなれなくて、満たされなくて。
でもそんなはしたない事、露木君には絶対に言えないし……。
「はぁ……」
俺は溜息を吐きながら、リビングの大きな窓から覗くどんよりとした重い雲に覆われた空を見上げた。
今日も相変わらず雨が降っている。雨は嫌いじゃないけど、こうも毎日続くと気が滅入ってしまう。
露木君は今日はあの人に会うと言っていたけど、上手くいったのかな? 露木君のお母さんに何だかんだと理由を付けて言いくるめられていなければいいんだけど。
まぁ、露木君だし。きっと大丈夫だろう。
そんな事を考えているうちにウトウトしてしまい、いつの間にかそのまま眠ってしまったらしい。
気付けば辺りは真っ暗で、慌てて起き上がると首がミシリと嫌な音を立てた。
窓の外からは大粒の雨音。どうやらまだ降り続いているようだ。
「いてて……」
首を擦りながら時計を見ると、針は既に20時を過ぎていてスマホには『今夜は遅くなりそうだから先に寝てていい』という露木君のメッセージが入っていた。
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