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欲求不満 ②

「はぁ……露木君、まだ帰ってこないのか」 俺は思わず溜息を吐いた。すぐに終わるかと思ったのに、あのお母さんはまだ何かごねて居るのだろうか? 先に寝てていいと言われても、やっぱり寂しいし、それに……。 「……っ」 最近シてなかったから、ちょっと期待してしまっていた部分もあった。怪我をした手はもう治っている筈なのに全然手を出してこないのは、お母さんの件で関係ない一織も巻き込んだりして、露木君の中で色んな負い目があったからなのかもしれない。 だから今日、彼女との話し合いが無事に終わったら、もしかしたら……。なんて。都合のいい事を考えていた自分が恥ずかしい。 「っ、ばかだな……俺」 何気なく開いたパソコンからNaoの声がする。画面の中の彼はやっぱりかっこよくて、思わずうっとりと見惚れてしまった。 「はー……今日もカッコイイなぁ」 いつ見ても何度見返しても飽きないくらい本当にかっこいい。俺と違って余裕のある雰囲気とか、ちょっと意地悪な所とか、大人な感じがして凄く憧れるし、それに、やっぱり凄く好きだなって思う。 コメント欄を見ても彼に憧れる女子は多くて、沢山の人に好かれてる彼が俺の恋人だって思うと、ちょっとだけ優越感があったりする。 「好き」 言葉に出すと余計に恥ずかしくなってきて顔が熱くなった。そして同時に胸の奥がきゅうっと切なく疼く。 ……露木君。早く帰ってこないかな? 寂しさが募ってどうしようも無くて、衝動に駆られるがままそっと露木君の部屋に忍び込んだ。 主のいない部屋は月明かりに照らされていて、薄暗くて静かだ。 こっそり忍び込むのは良くないことだってわかってる。けど、どうしても我慢できなかった。 俺はドキドキしながらベッドに潜り込むと露木君の枕を抱き締める。そしてそこに顔を埋めて大きく息を吸い込むと微かに香る彼のにおいに胸が高鳴った。 「……っ」 それだけでもうドキドキして身体が熱くなるのを感じた。もっと彼の匂いに包まれたい。そう思って思わず服の中に手を入れようとしたけど、寸での所で思い留まる。

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