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欲求不満 ④
無機質で洗練された部屋に似合わないその箱の中身は、確か以前露木君が言っていた大人のおもちゃ……。
俺はごくりと生唾を飲み込むと、ベッドから転げるようにして恐る恐るそこへ手を伸ばした。震える手で蓋をゆっくりと開けると中には幾つものアダルトグッズが乱雑に放り込まれている。
「……っ」
その中の一つを手に取りまじまじと見つめた。それは小さな楕円形をしたピンク色のローターだ。スイッチを入れるとブルブルと振動するらしいけど、操作方法がいまいちわからないからまだ使っていないと言っていたやつ。その他にも明らかにAVで見たことがあるような大人のオモチャが沢山入っている。
「っ、露木君……こんなの集めて、どうするつもりなんだろ……」
思わず独り言を呟いてしまいハッとして口を噤んだけど、幸いなことに部屋が静かすぎて俺の声は思った以上に響いてしまったらしい。
「……何してるの?」
「ひぁっ!?」
不意に背後から声をかけられて心臓が止まりそうになった。恐る恐る振り返るとそこには呆れた顔をした露木君が立っていて、俺は慌てて手に持っていたローターを後ろに隠すと引きつった笑みを浮かべた。
「お、おかえり……」
「ただいま。で? 人の部屋を漁って、何してたの?」
露木君は抑揚のない声で俺を見下ろしながら問いかけてくる。その目は笑ってなくて凄く怖い。
「っ、べ、別にまだ何も……」
「まだ?」
俺はぶんぶんと首を振って誤魔化そうとしたけど無駄だったみたいで、露木君に腕を掴まれる。そのまま強引にベッドの端へと座らせられた。
「言葉を変えようか。 僕の部屋で何をしようとしてた?」
「……う……っ」
問い詰められて言葉に詰まる。まさか、素直に『露木君の部屋でオナニーしようとしてました』なんて言えるわけがない。かといって上手い言い訳も思い浮かばない。
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