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直接対決2

「……なんか、幸せ過ぎて怖いな」 不意に露木君がポツリと呟いた。俺は一瞬何の事かわからず首を傾げる。 「何言っ……」 言葉は全て言い終える前に遮られてしまった。露木君の唇が俺のそれを塞いでしまったからだ。 一瞬の触れ合いだったけど、それだけでも十分だった。顔が熱くなるのがわかる。 俺が何も言えずに固まっていると露木君はクスリと笑ってもう一度軽く触れるだけのキスをした後、ゆっくりと身体を起こした。そしてそのまま俺を抱き寄せるようにして起き上がる。 その一連の動作があまりにも自然すぎて抵抗する暇もなかった。 露木君は俺を腕の中に閉じ込めるようにして座らせると再び唇を重ねてくる。 今度は長く深いキスだった。舌を絡ませ合い互いの唾液を交換し合うような濃厚なそれに頭がくらくらしてくる。 でも、不思議と抵抗する気にはなれなくて、むしろもっとして欲しいと思ってしまった自分に驚く。 「ん、ふ……っ」 ようやく解放された時にはすっかり息が上がってしまっていた。露木君はそんな俺の様子を愛おしそうに見つめている。 「ねぇ、環。もう一回したいって言ったら怒る?」 恐ろしい事を口にする露木君。 「は!? だ、駄目に決まってんだろ! 昨夜何回ヤったと思ってんのさ!」 俺は慌てて首を横に振る。正直腰が痛くて起き上がれるかすら怪しいし、これ以上されたら本当に立てなくなってしまうかもしれない。 明日学校に行けなくなったらどうしてくれるんだ。 「あはは、やっぱダメかぁ」 露木君は残念そうに肩を竦めると俺の頭を優しく撫でた。 「じゃあさ、せめて一緒にお風呂入ろっか」 「は? なんでそうなるんだよ!」 「だって環の可愛い姿もっと見たいし」 このイケメン彼氏はこっちが恥かしくなってしまうようなセリフを至極当然。みたいな顔してシレっととんでもない事を言ってのける。 「な、何言ってんだよ! この変態!」 俺は顔を真っ赤にして叫んだ。もう付き合ってられないとばかりにベッドから降りようとするけどすぐに腕を掴まれてしまう。そしてそのまま引き寄せられて後ろから抱きしめられた。 「環」 耳元で名前を呼ばれてゾワリとする感覚に襲われる。 「……っ、ちょ、やめ……」 「ねぇ、いいでしょ?」 甘えるような口調で囁かれると何も言えなくなってしまう自分が恨めしい。結局今日もこうして流されてしまうんだろうなと思いながら小さく溜息を吐くと、露木君の腕の中で大人しくなるしかなかった。
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