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直接対決 ③

学校に行けばいつもと変わらぬ日常が待っている。 少々違うのは、露木君の周りに女子が群がってキャーキャー騒ぎ立てている事くらいだろうか。 「露木君、今度一緒にカラオケ行こうよ」 「あ、ずるい! 私も行きたい!」 そんな光景を横目に見ながら俺は自分の席に着く。あのバスケの一件以来、露木君の周りには女子がやたらと集まるようになった。 今まで散々、堅物だの根暗だのって馬鹿にしていたくせに。眼鏡の下に隠してあった素顔を知った途端手のひらを反すようにちやほやし始めた彼女たちの単純さに呆れてしまう。 これだから女子は苦手なんだと心の中で毒づきながら、俺は少し離れた所から彼女たちのやり取りを眺めていた。 露木君はと言えば、半ばうんざりした様子で 適当にあしらっているようだ。 「あー、うん……考えとくよ」 露木君は心底困ったような表情を浮かべている。きっと内心では今すぐ帰りたいと思ってるに違いない。 「たく、女子のパワーはすっげぇな。まぁ、俺も眼鏡一つであんなに雰囲気変わるなんて思ってなかったし、正直ビビったけど……」 隣にやって来た賢人が半ば諦めたように呟く。俺も最初は驚いたし、Nao=露木君だなんて気付かなかったし。 「椎名は平気なわけ?」 「ん? なにが?」 唐突な問いに首を傾げると、賢人は呆れたように溜息を吐いた。 「だってお前ら付き合ってんだろ? 女子に迫られて嫌な気持ちになる男なんていないだろうし……」 「あー、うーん。特には。……露木君が俺の事しか見て無いのは、嫌って言うほど知ってるし」 そのお陰で、今日は腰が痛くてまともに動くことも出来ない。 「ったく、惚気やがって」 賢人は苦笑混じりに呟いて俺の頭をわしゃわしゃと撫で回してきた。俺はそれを鬱陶しげに払いのけながら窓の外へと視線を移す。

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